「個人視聴率の本格的な導入によって影響を受ける」と言われているのは、『ポツンと一軒家』だけではありません。
『林修の今でしょ!講座』(テレビ朝日系)、『林修のニッポンドリル』(フジテレビ系)、『プレバト』(MBS・TBS系)、『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)、『THE!爆報フライデー』(TBS系)など「高齢層の人気で世帯視聴率を獲得してきた」と言われる番組が影響を受けそうなのです。
さらにこれらの番組以外にも、業界と視聴者の両方から「テレビ朝日やTBSのゴールデンタイムは高齢層向けが多い」と言われているだけに、今回のリニューアルには戦々恐々のはず。一方、以前からいち早く若年層やファミリー層を重視してきた日本テレビにとっては、世帯視聴率から個人視聴率へのシフトが進むほど、トップの座は盤石になっていくのではないでしょうか。
ただ『ポツンと一軒家』に関しては、今回のリニューアルで「全国で何人が見たか」が明快になるため、番組の性質上、地方での人気が高い同番組は総視聴者数で『イッテQ!』を上回る可能性があるでしょう。これほどの人気番組だからこそ、“高視聴率”だけでなく、“視聴人数の多さ”が世間の印象を左右するかもしれないのです。
ともあれテレビ業界としては、「同じ時間帯に人気番組が並び立つ」という往時を彷彿させるライバル関係だけに、今後も『ポツンと一軒家』と『イッテQ!』のデッドヒートが続いたほうがいいのでしょう。
両番組に限らず、コロナウイルスの感染拡大という逆境と、個人視聴率の本格導入という変化にどう対応していくのか。今春は多くの番組にとって試練の季節となりそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。