音楽業界の経済活動の多くを担うライブ産業が行えない今は、音楽に携わる人間たちにとって、なんとか首の皮一枚つなぎとめている状態だ。緊急事態宣言が出されたことで、自粛要請ではなく「休業要請」となった現在、経済状況は悪化の一途を辿る。
「このままだと事務所も僕らに給料が払えなくなって、無一文になってしまう」
と冗談交じりに語っていたアーティストも、半分は本音だろう。飲食店やレコード店などを自身で経営するアーティストたちも、テイクアウトや通販などで場をつないではいるものの、通常通りの営業と比べれば収入は落ち込んでいる。
このままライブが行えない時期が続くと、ライブハウスだけでなく、フリーランスや専門会社に勤める音響スタッフや照明スタッフも廃業せざるを得ない。多くの音楽業界人はこの状態を1年続けるのはまず困難であると考えているはずだ。
文化とは生命活動において、「不要不急の行動」であり「3つの密」が生まれる場所にもなり得る。だがそれを生業としている人々も数多く存在し、大規模なコンサートなどに全国各地から人が赴くことで公共交通機関や宿泊施設の利用者が存在し、周辺の飲食店やケータリングサービス業者が潤うなど、文化の周りには文化以外の大きな経済活動が生じているのだ。
大阪府の吉村洋文知事は4月1日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた要請に協力した民間事業者に補償を行う「インセンティブ制度」を導入する考えを示した。府の要請で店名を公表した大阪市内4か所のライブハウスに損失補償をするという。
また、東京都の小池百合子知事は、5月6日まで休業要請に応じた事業者には50万~100万円の「協力金」を給付すると発表した。
今後、国や自治体による緊急経済対策で、経営難に陥る中小の事業者がどれだけ持ちこたえられるか分からないが、これまでわれわれの心の豊かさを養ってきた文化施設の存続を切に願うばかりだ。