「90試合ならば規定打席は279。2017年の近藤は57試合、231打席で4割超えの実績を残しているので、大いに期待できるでしょう。
また、7月開幕であれば、暑い季節に成績を残す“夏男”に有利とも考えられる。近年、7月以降に月間4割をマークした打者を見ていくと、2018年7月のヤクルト・山田哲人(27)が打率.425、同8月の広島・鈴木誠也(25)が打率.414、2019年8月のオリックス・吉田正尚(26)が打率.407といった例がある。内野安打を狙いやすい左打者、選球眼がよい、といった条件を踏まえると、吉田も4割を目指せるのではないか」(前出・広尾氏)
とはいえ、あまりに違う前提での“大記録達成”に戸惑いを口にするOBもいる。辛口評論でお馴染みの江本孟紀氏はこう話す。
「難しい問題です。100試合くらい開催できるなら公式記録にカウントしてもいいだろうが、もっと少ない試合数なら、今季は“参考記録”の扱いにするべきかもしれません。90試合はギリギリ。その試合数でバースの打率や沢村栄治の防御率0.81(1937年春)といった伝説の記録が塗り替えられたら、複雑な気持ちになりますからね」
一方、中日時代の1982年、打率.350の記録を残しながら、わずか1厘差で首位打者を逃した経験を持つ田尾安志氏は、「(記録の扱いは)コミッショナーが決めたことに従えばいい。ファンに楽しんでもらうのが第一で、タイトルや記録はあくまで結果。選手は記録のためにやっているわけではない」と話す。ちなみにこの年の首位打者は大洋の長崎啓二(当時)今後、大物OBの間でも今季の記録が“論争のタネ”となりそうである。
※週刊ポスト2020年4月24日号