芸能

波瑠主演の日台共同制作ドラマ『路』 私が興ざめした言葉

番組公式HPより

 ドラマと原作の関係は一筋縄にはいかない。必ずしも忠実であることが求められるわけでもないが、原作に思い入れを持つ読者はギャップに戸惑うことが少なくない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。

 * * *
 新作ドラマをなかなか見ることができない。そんな「飢餓状態」の中、注目を集めている新作があります。「海外ロケを大々的に行い贅沢な映像に仕上げ、主役は波瑠」とくればドラマ好きが飛びつかないはずがない。土曜日午後9時、NHK・台湾の共同制作による土曜ドラマ『路(ルウ)~台湾エクスプレス~』です。

 台湾新幹線の建設プロジェクトを軸に、日本人と台湾人の絆を描き出した吉田修一の同名小説が原作。脚本は大河ドラマ『篤姫』『江』などを手がけてきた田渕久美子が担当しています。

 物語は……多田春香(波瑠)が勤める大井物産は1999年、台湾高速鉄道車両システムの優先交渉権を獲得。春香は新幹線建設チームの一員として台湾へ出向する。

 実は春香の心の中にはエリック(アーロン・炎亞綸)という一度だけ会ったことのある台湾青年の姿が刻まれていた。連絡先がわからなくなり二人は会えないままだったが、とうとう再会することに。その一方、春香には恋人の繁之(大東駿介)という存在が日本にいて…。

 まず何よりもインパクトがあるのは、鮮やかに立ち上がる台湾ロケの映像でしょう。青々と繁る南国の木々、グァバ畑の間を疾走するスクーター。スコールと太陽の日差し、海鮮粥の湯気が立ち上る屋台、夜市に輝く果実。

 新型コロナの感染拡大で外出自粛となり自分の住む街ですら呑気に出歩けない今。ましてや外国なんて、とても遠い。以前はあんなに気軽に出かけていたのに。

「行けない状態」になればなるほど、異国の風景がまぶしい。街の匂い、路地から響いてくる異国語。旅の郷愁のようなものすら漂う映像に、心を奪われます。そうした映像を背景にエリックへの気持ちを抱えて揺れる春香を、波瑠が瑞々しく演じています。

 という恋愛ドラマかと思いきや、原作が吉田修一氏だけに物語はそう単純ではなさそう。新幹線建設の話に加えて、台湾で生まれ育ち終戦で日本へ引き揚げた、いわゆる「湾生」の葉山勝一郎(高橋長英)のエピソードが印象深く挿入されるからです。

 ドラマに導かれるようにして原作小説を手に取り「映像→文字」という流れで二つの作品世界を味わってみることにしました。いわば新型コロナがくれた数少ない豊かな時間、偶然の恩恵とも言えるひととき。

 吉田氏の原作小説は文庫で500ページ近くと厚みのある世界です。その中にたしかに春香とエリックとの邂逅やほのかな恋も描かれていました。が、しかし『路』というタイトルの意味は奥深く、道筋は決して1本ではないのでした。

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン