日本有数の別荘地で目撃
A子さんにとって、愛娘の“独立”は寝耳に水だった。杏が個人事務所から退社するのは“無効”だと主張し、2015年には調停を申し立てるに至ったのだ。しかし話はまとまらず、2017年末についに訴訟に発展した。
普通に進めば杏が勝訴
A子さんが求めていたのは、杏が個人事務所の従業員であることの確認と、4000万円の支払いだ。支払いの内訳は、調停の席で名誉を毀損したとして慰謝料1000万円。さらに、杏がその後も20年間、個人事務所に在籍を続けた場合の利益を約12億円と算出し、ひとまずはそのうちの3000万円を補填するように求めていた。杏にとっては寝耳に水の“12億円裁判”の始まりだった。
それだけではない。A子さんは、自らの主張の正しさを裏付けようとしたのか、コンサルタントに頼っていたのは杏の方であるとか、東出と杏がデートをする際にホテルの部屋を予約し、チェックインやチェックアウトを代行したのは自分だとかといった、さまざまなことを“暴露”していったのだ。父と母が法廷を舞台に“暴露”し合った当時の悪夢がよみがえる裁判だっただろう。
なお、A子さんは過去に、これとは別の訴訟も起こしている。相手はトップコートだ。理由は杏のギャラが個人事務所に充分に支払われなかったというものだが、一審二審ともに敗訴が確定している。
先にも述べたが、2人の間には確かな絆で結ばれていた時期もあった。
「争いの舞台となっている個人事務所設立時のことです。社名を決めるにあたって、2人は、かつて港区内にあったカフェで長時間話し込んだようでね。杏さんが提案した社名にA子さんがやんわりと反対し、杏さんが大好きな“ねぎとろ”をもじった社名を提案したんです、大好きなねぎとろをたくさん食べられるよう、願いを込めてユニークな社名をつけました」(前出・共通の知人)
ほっこりするエピソードも、今は昔。杏はその個人事務所について、裁判で、「被告(杏)の努力によって得られた経済的な利益を原告(A子さん)が収奪するという機能を果たしてきた」と主張するほどに、2人はすれ違った。
母娘の争いには、裁判所から和解が提案されてきたが実らず、和解交渉は2019年3月に一度、打ち切られていた。今年3月にはA子さんの尋問が予定されていたが、体調不良を理由に日程は再調整されることに。コロナ禍も相まって尋問の日取りが決まらずにいる中、急転直下で和解が決まった。その背景を民事訴訟に詳しい弁護士が解説する。
「杏さんが個人事務所を退職してトップコートと契約することに問題はないはずですから、普通に進めれば、杏さん側が勝訴した事案だと思われます。それなのに和解したのは、その条件に今後の口止めも含まれているからだと予想します」
実際に、有名人が和解を選択する場合は、和解条項に口外禁止条項を入れるなど、たとえ勝訴しても得られない条件を織り込むことが多い。杏は、“和解という勝利”を勝ち取ったのだ。それは同時に母との“絶縁”も意味するのだろう。