特筆すべき波瑠と浜辺美波のタフさ
俳優の中には、入念な準備をして役作りをし、撮影中はどっぷりと役に入り込むため、「終了後に役を抜く期間がほしい」「役をしっかり落としてから次の現場に行く」という人がいます。
しかし、これまで多くの俳優にインタビューした結果わかったのは、連ドラ出演の経験が増えるほど、それらの過程が不要になり、「台本を読むと切り替えられるようになった」「撮影現場に行くと前の役を忘れられる」という人のほうが圧倒的に多いこと。たとえば、「ドラマや映画に一年中出続けている」と言われる田中圭さんは、役作りが早く、気持ちの切り換えがうまいから、難なく連続出演をこなせるのでしょう。
そしてもう1つ、連続出演の難しさにふれる上で忘れてはいけないのが、コンディショニング。もともとドラマの撮影はバラエティなどと比べても時間が長く、屋外ロケや待ち時間などもあってコンディションの維持が難しいため、「ドラマは1年に1作程度」と決めている女優もいるくらいです。
さらに、現在のコロナ禍による感染予防の制作ガイドラインで、これまでになかったストレスが俳優たちの心身にのしかかりました。常に換気を求められるため、カゼをひいたり、のどの調子が悪くなったり。あるいは、ひと息つく雑談などのコミュニケーションが取れず、時間制限で失敗の許されない緊張感に襲われるなどの影響で、今夏ドラマのクランクアップ後に体調不良を訴える女優がいたそうです。
その点で驚かされるのは、細身の体で2作連続主演を務める波瑠さんと浜辺美波さんのタフさ。2人は「主演が熱を出しただけで撮影が止まり、多くの共演者やスタッフに迷惑をかけてしまう」というプレッシャーを感じさせない心身の強さがあるからこそ、連続出演をこなせるのでしょう。
前述した連続出演中の俳優たちは、演技力はもちろん心身のタフさも持ち合わせていますが、それでも年明けの冬クールは、さすがに休むのではないでしょうか。だからこそコロナ禍で過酷な状況の中、熱演を続ける彼らの奮闘に注目してほしいのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。