シニア女性向け「会いに行けるアイドル」としてだった歌謡コーラスグループ「純烈」。2021年6月、温泉の宴会場で無観客ライブを行った(時事通信フォト)
前述の通り、内藤さんは以前、ごく短い期間に介護士の経験がある。しかし以前の施設は要介護4以上ばかりの特養で認知症がすすんだ利用者も多く、入所者との会話はほとんどなかった。コミュニケーションが活発で自立状態の入居者を対象にした有料老人ホームとはまた違う。介護福祉関連の話は本旨ではないためこの程度に留めるが、それにしても「お婆ちゃんまで冷たい」とはどういうことか。
「元気なお婆ちゃんって容赦ないですよ、お爺ちゃんも大概ですけど、僕にしてみたら容姿であれこれ言われることは少ない。でもお婆ちゃんってイケメン好きで、若いシュッとした介護士には優しくても、僕には下僕あつかいです」
お婆ちゃんはイケメン好き、すごくわかる。デイサービスに行きたがらないお婆ちゃんもイケメンが迎えに来ると喜んで出かける。お婆ちゃんは女児同様、わかりやすいイケメン青年が大好きだ。でもマスクをしていればわからないのでは?
「マスク越しでもブサイクがわかるくらいのブサイクだから辛いんですよ」
僕みたいなその辺のおっさんは誰もかばってくれない
本音のところ、男女問わず人間の大半は美しいとされるもの、自分が美しいと思うものが好きだろう。それは仕方のない話だが、だからといってブサイクだから、醜いからと口にするのは論外だ。
「あたりまえの話ですけど、その当たり前って小さなコミュニティでは守られません。とくにブサイクな男、まして僕みたいなキモいおっさんは何を言ってもいいってなります。ずっとそうでしたから、わかります」
近年、SNSなどを中心に容姿で差別してはいけない、ルッキズム反対という意見は増えてきた。
「でも実社会ではどうですかね。そんなことを言っている人も、個々人の内輪レベルでは美醜で判断してるでしょう。しょせんネットの話、人間なんてそんなもんです。それに差別しちゃいけない対象に男、ましてや”おっさん”は入ってません」
内藤さんは諦観している。しかし高齢女性までそれとは思わなかったという。
「露骨に口が悪いですね、あんたは気持ち悪い顔だねえとか、お前を見てるとメシがまずくなるとか、その顔じゃ嫁さん来ないのも当然とか、人生70年80年生きたお婆ちゃんから言われるんです。それも複数で。僕を人間扱いしてなかったクラスの女子まんまです」