「野球部だけでなく学校が持ち込みを禁止しているからです。時代が変化しているのは理解していますし、色々と活用法があるのはわかっていますが……」
大阪桐蔭の野球部は全員が寮生活だ。せっかく野球に集中する生活を送っているのに、そこにスマートフォンがあると邪念が生まれたりする懸念はあるだろう。大阪で大阪桐蔭と並ぶ名門の履正社も、携帯電話は学校の規則で禁止だった。ところがこの7月から解禁となった。岡田龍生監督にその理由を訊ねた。
「携帯電話を禁止している大阪の私立は、うちと大阪桐蔭と、たしかもう1校あるかないか。これだけ携帯電話が普及している時代に、逆行する流れではありましたよね。今は解禁になったばかりで、細かなルールを職員同士で話し合っています。
うちの野球部の場合、選手は『通い』ですから、これまで雨で練習試合が決行できるかどうか不安な時など、遠方から通う選手は途中で公衆電話から連絡を入れることもあったんです。そうした連絡も、携帯電話を許可していたら共有しやすい。それは保護者への連絡も同じです。ただ、寮生活の野球部は導入しないほうがいいかもしれない。ややこしいことが部内で起こった時に、情報が親にダダ漏れになってしまうから(笑)」
今ではグラウンドにポケットWi-Fiを持ち込み、岡田監督自ら選手のバッティングを動画撮影し、選手の携帯電話に転送することもあるという。投手の投じるボールの回転数や回転軸、球速などを計測する「ラプソード」を導入する学校も増えている今、携帯電話もまた球児の成長に必須の練習器具といえるかもしれない。
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)