芸能

小栗旬の『日本沈没』 作品を薄く広く覆っている「軽さ」について

面目躍如となるか

小栗旬は環境省の官僚を演じる

 秋ドラマも続々とスタートしているが、TBSの日曜劇場といえば、近年ヒット作を続々生んできた再注目の枠。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 小栗旬主演のドラマ『日本沈没-希望のひと-』(TBS系日曜午後9時)が絶好調。平均視聴率(世帯)第1話は15.8%、2話15.7%と高い数字をキープ。見逃し配信の再生回数も初回の放送後1週間で261万回(TVer、TBS FREE、GYAO!の合計値)と同枠の歴代作品1位に輝いたそうです。という数字もさることながら、豪華な俳優陣にびっくりした人は多いのではないでしょうか。

 エリート官僚役に小栗旬、松山ケンイチ。地球物理学者に香川照之、國村隼。内閣総理大臣に仲村トオル、副総理に石橋蓮司……。ズラリと居並ぶ有名俳優たち。コストをかけて作っていることがうかがえTBSの力の入れようが伝わってきます。とはいえ、その費用対効果がきちんと出るのかはまだ未知数です。

 原作はSF作家・小松左京のベストセラー『日本沈没』。その原作に大きくアレンジを加えて2023年の東京が舞台。日本地球物理学界の異端児・田所博士(香川照之)が“関東沈没説”を唱えるが、政治的な攻防によってデータの改ざん・隠蔽が行われてしまう。検証報告の結論に異を唱える環境省のエリート官僚・天海(小栗旬)は、何とか田所博士の研究を伝える手段を探っていくが……。

 まさしく一国の運命がかかっている壮大な話。いや壮大さだけでなく、テーマの深刻度もド級です。というのも現実の世界では阿蘇山をはじめ各地の火山が噴火し、海の中でも小笠原諸島付近の海底火山等が噴火中。東京は震度5の地震で帰宅困難者が出たばかり。30年以内に南海トラフ地震が70%~80%の確率で発生すると予測され、最悪の場合の死者は32万人と警告が出ている。

 まったく他人事ではありません。だからこそ、このテーマは今やるべきだとも言えるでしょう。警告の役割を担うという意味で。しかし、ドラマ全体を薄く広く覆っている「軽さ」が、現実の危機との落差を否が応でも感じさせてしまう。

 田所博士は「地殻変動によって関東が沈む」と主張。そんなショッキングな指摘をしているというのに、風変わりな研究者の単独の研究で偏屈な主張として描き出される。多数の人の生き死にを左右する問題という張り詰めた空気感が、なかなか伝ってこない。2023年の東京を舞台に設定したのだとすれば、そのあたりがやや中途半端ではないでしょうか。

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン