「この回の生中継のイメージが強かったせいか、いまだによく『国鉄のかたですよね』と言われるんです。『サヨナラ模様』がヒットした国鉄職員の伊藤敏博さんと間違われるんです(笑い)。“ザ・ベストテン歌手”と言われるのは誇りですが、ぼくは旅先からの生中継が多く、スタジオに1回しか行けなかったのが残念です」
続いて、再びスタジオに戻り、第8位の郷ひろみ(66才)が『もういちど思春期』を熱唱。そして、CMとトークを挟み、7位と6位の発表。
「今週の第7位は、山本譲二さん『みちのくひとり旅』6846点~。続いて今週の第6位は『まちぶせ』石川ひとみさん、7489点~」と久米が声を張ると、ミラーゲートから山本譲二(71才)と石川ひとみが一緒に登場して応接セットへと歩み寄る。「いらっしゃいませ。山本さんは2つ順位が上がりました」と黒柳。
そして、3日後に22才の誕生日を迎える石川が、名古屋の母親と電話でつながれると、唐突に寸劇が始まった。当時、石川が同番組で披露するこうした“小芝居”がウケていて、この回では黒柳や山本も巻き込んでの一幕となった。
石川がカメラ目線で「みんな、家族っていったい何なの?」と問いかけると、石川の母が「まー、ひとみももうそんなことを考える年になったのね」と応じ、兄役の山本が「兄さんはこう思う。家族っていうのは愛で結ばれた仲間さ」。しかし、おば役の黒柳が「何が愛よ、何が仲間よ。人間なんてしょせんひとり。あなたたちは、まだ子供ね」。
石川「おばさま、ひどい! おばさまは長い間ひとりで暮らしてこられたから、家族の意味がわからないんだわ。もう、おばさまの顔見たくない!」
山本が激昂、黒柳が泣く。
石川「私が悪かったわ。おばさまの人生。兄さんの人生。みんな一生懸命、歯を食いしばって生きているんだわ。みんな、そうでしょう””」
石川が「どんなにつらくても負けちゃいけない。愛があれば。夜が明けたわ。私たちの夜明けよ」と語ると光が差し込み、一幕が終わる──と次の瞬間、冬景色のセットに切り替わり、山本がシリアスに情感を込めて『みちのくひとり旅』を歌い出す。続いて、霧の奥にある赤いリボンのボックスからのびた白い階段で石川が歌い、背後で踊り子が妖精のように踊る。
ちなみに、掲載した画像は、この回の担当美術デザイナー・金子俊彦さんが描いたセットのデッサン画だが、それぞれの曲の世界観を美術セットが絶妙に再現していることがわかる。
歌手たちの思い
この“神回”に登場した3人の歌手に『ザ・ベストテン』への思いを聞いた。まずは、『メモリーグラス』が第9位にランクインした堀江淳はこう話す。