国土交通省の『世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキング』によれば1980年に神戸港が4位、横浜港が13位、東京港が18位だったのが2019年にはすべて圏外、つまり「世界的な港」というのが日本から消えて久しいということだ。出貨と入貨(輸移出入)の合計値だが、他の基準でも上位に日本の港は登場しない。ちなみに2019年は東京港39位、横浜港61位、神戸港67位、名古屋港68位、大阪港80位である。正直、筆者の記憶にあった「世界の中心」日本という国の順位とは遠くかけ離れている。
「2020年なんてコロナ禍でさらに差がついてます。経済回したほうが勝ちなんです」
興味深いので電話に切り替えて資料をあたる。中国、本当に凄い。国土交通省の2020年速報値では1位上海、2位シンガポール、3位寧波(舟山)、4位深セン、5位広州、6位青島、7位釜山、8位天津、9位香港、10位がロサンゼルス(ロングビーチ)と世界の上位10位の中に中国の港が7つも入っている。現代の太平洋の主要港は中国と、シンガポールと韓国、そしてアメリカが握っているということだ。
「だからアメリカと中国の間だけで運びたがるわけです。気軽に日本に寄ってもらうなんて昔の話ですよ、向こうからすれば日本に寄るのは割に合わないですからね」
筆者はこれまでも日本の「食の安全保障」について『憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる』『商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も』で書いてきたが、こうした生活の実感として明確な事態と数字に対し、あまりに無頓着過ぎたのでは、という思いからである。
「貿易は戦争ですからね、北東アジアのハブ港という立ち位置の韓国と、東南アジアのハブ港として圧倒的なシンガポール、両者は見越していたということですよ」
ほぼ世界の上位を占める中国の港とともに両港の存在は圧倒的だ。とくに韓国の釜山港は国家プロジェクトとして「北東アジアのハブ港」を目指した。日本のいわゆる京浜港(東京、横浜、川崎)、阪神港(神戸、大阪)に伊勢湾(名古屋港、四日市港)を足してもかなわない。それにしてもこの10年、日本は「気づいたら敗北」が多すぎる。
「関税はかからないし、港は大きくて気兼ねなくコンテナが寄れる。中国と陸続きの地勢的な有利さもありますけど、ハブ港を作れば寄ってもらえるって賢く立ち回る小国ならではの発想ですよね」