「スポーツ選手は悔しさを肥やしに戦うと言われます。ファンが全てを肯定する世界を作り上げて、良い意見しか耳に入らない状態になってしまうのはマイナスだと思います。長嶋さんや王さんのような昭和の大物だけでなく、イチローさんや松井秀喜さんも公のインタビューで自らケガについて話すことはほとんどなく、打てない時に言い訳などしなかった。そして結果が出なくても、泰然自若と振る舞い、次への活力にしていました」
かつて、長嶋茂雄は「努力してますと練習を売りものにする選手はプロフェッショナルとは言えない」と努力を他人に悟られることを嫌った。王貞治は「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」と自分を律する名言を残している。
王を尊敬したイチローはヤンキース時代、“不惑”の40歳を迎える2013年に「努力をすれば報われると本人が思っているとしたら残念だ。それは自分以外の第三者が思うこと。もっと言うなら本人が努力だと認識しているような努力ではなく、第三者が見ていると努力に見えるが本人にとっては全くそうでない、という状態になくてはならないのではないか」と述べていた。
そして今、世界のトップレベルにある羽生から『努力って報われない』という発言が出るようになったのは、時代の変化の象徴かもしれない。