過去にも差別発言
維新の会が差別発言をめぐって問題になったのはこれが初めてではない。
2019年5月、前回の参院選に公認候補として出馬が予定されていたフリーアナウンサーの長谷川豊氏が、講演会で近世の被差別階層とされた人たちについて「士農工商の下に、人間以下の存在がいる」と言及、「当然、乱暴なども働く」「プロなんだから、犯罪の」などと述べた。
これを問題視した部落解放同盟中央本部は維新に抗議文を提出。長谷川氏は謝罪の上、公認を辞退し、維新は今後、党規約に人権綱領を盛り込むなどの対策を講じるとした。その後、「人権侵害に対して解決に向けた行動を促進」という旨の文言が盛り込まれた。
しかしそれから3年、またもや同じような問題が起きたのだ。後房雄・愛知大学地域政策学部教授は言う。
「過去にも問題が起きていたにもかかわらず、依然として維新は政党として人権意識が低いままだったということでしょう。確かに維新は、統治機構改革や競争力向上といった政策において成果を挙げています。しかし一方で大阪の地方政党から本格的な国政政党に脱皮しようとするタイミングで、政党としての意識の低さが露呈してしまった。
今の維新を見ていると、多くの候補者を擁立し、“量”を増やす取り組みを進めていますが、一方で“質”はどうなのか。党の国会議員、候補者の育成過程が杜撰になっているとすれば、これは党としての責任問題です。この差別発言は石井氏個人の問題ではなく、組織としての維新の責任が問われていることを、党として理解すべきです」
石井氏が名前を挙げた元代表の橋下氏は、差別報道と戦った経験がある。2012年には橋下氏の出自や父親について書かれた『週刊朝日』の記事をめぐり、記者会見で「身分制、血脈主義を肯定するような内容で一線を越えている」「実の父親に育てられた記憶はなく、僕の人生に関係ない。こういうことを認めたら僕の子供や孫にも影響する」と強く抗議、出版元の朝日新聞出版は謝罪する事態となった。
その橋下氏をめぐり、今度は身内だった維新から差別発言が飛び出すことになるとは。橋下氏の盟友である現代表の松井一郎・大阪市長、そして橋下氏の後継者で次代の維新を担う副代表の吉村氏はこの問題にどう対処するのか。
今度もうやむやにするようであれば、維新が真の国政政党として脱皮する機会はなくなるだろう。
※週刊ポスト2022年7月1日号