芸能

『鎌倉殿の13人』は大河ドラマを変えた、『仁義なき戦い』がヤクザ映画を変えたように

三谷

三谷幸喜氏は『仁義なき』を参考にしたというが、鈴木氏はどう見るか

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が最終回を間近に控え、血みどろの権力闘争を激化させている。脚本を務めた三谷幸喜は、執筆にあたってヤクザ映画『仁義なき戦い』を参考にしたと明かしているが、暴力団に精通するフリーライターの鈴木智彦氏は、両作には共通した「革新性」があると指摘する。

 * * *
 鎌倉幕府は御家人たちの利益共同体だった。御家人である武士たちは私的な暴力集団だ。欲望を実現する手段は暴力で、己の利益を第一に考え、忠義や奉公というしゃらくさい美徳には目もくれない。金(所領)くれる人がいい人、いい支配者であり、どこまでもリアリスト目線を崩さない。「いいもんを食って、いい車に乗って、いい女を抱く」ために渡世入りするヤクザと似ている。毎回、利益を天秤にかけて付き従う側を決定するので、容易に今日の味方が明日の敵に反転する。親族さえも信用できず、親子・兄弟でも殺し合う。

 血みどろの暴力闘争での勝者がトップになって実権を握るので、成立した組織は暴力によってのみ担保され、恐怖で支配される。暴対法を適用すれば、まず間違いなく特別危険指定暴力団になる過激さだ。

 人間の集団としては粗野でシンプルだが、そのぶん、ドラマ性は高い。御家人たちは虎視眈々と一発逆転の機会をうかがっている。謀反の緊張感が常に漂っており、強ければ誰にもチャンスが訪れる。面従腹背で権謀術数を練り、派閥闘争に持ち込んで謀略を駆使し、いざとなれば仲間すら誅殺する。裏切りは悪徳ではなく、順位逆転の正当な権利なのだ。迂闊にも他人を信じた善人が悲劇の中で刺され、斬られ、悶死する。殺しという極限状態に、人間そのものが垣間見える。

 笠原和夫が脚本を書いた『仁義なき戦い』は、それまでの道徳的任侠映画とは違い、裏切りのドラマを作り上げた。東映任侠路線のプロデューサーだった故・俊藤浩滋氏は実話路線を苦々しく思っていたようで、かつて私が所属していたヤクザ専門誌『実話時代』でちくりと皮肉を述べている。

「我々が作ってきた映画っていうのは、反体制視点でね。世のため、人のためにやろうっていう男らしい男を描いてきたわけでしょ。ところが実録というのは実際問題として(そういうものが)ないですよ」(1994年5月号)

関連記事

トピックス

還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
ここ数日、X(旧Twitter)で下着ディズニー」という言葉波紋を呼んでいる
《白シャツも脱いで胸元あらわに》グラビア活動女性の「下着ディズニー」投稿が物議…オリエンタルランドが回答「個別の事象についてお答えしておりません」「公序良俗に反するような服装の場合は入園をお断り」
NEWSポストセブン
志穂美悦子さん
《事実上の別居状態》長渕剛が40歳年下美女と接近も「離婚しない」妻・志穂美悦子の“揺るぎない覚悟と肉体”「パンパンな上腕二頭筋に鋼のような腹筋」「強靭な肉体に健全な精神」 
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《還暦で正社員として転職》ビッグダディがビル清掃バイトを8月末で退職、林下家5人目のコンビニ店員に転身「9月から次男と期間限定同居」のさすらい人生
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された佳子さま(2025年8月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《日帰り弾丸旅行を満喫》佳子さま、大阪・関西万博を初訪問 輪島塗の地球儀をご覧になった際には被災した職人に気遣われる場面も 
女性セブン
鷲谷は田中のメジャーでの活躍を目の当たりにして、自身もメジャー挑戦を決意した
【日米通算200勝に王手】巨人・田中将大より“一足先にメジャー挑戦”した駒大苫小牧の同級生が贈るエール「やっぱり将大はすごいです。孤高の存在です」
NEWSポストセブン
侵入したクマ
《都内を襲うクマ被害》「筋肉が凄い、犬と全然違う」駐車場で目撃した“疾走する熊の恐怖”、行政は「檻を2基設置、駆除などを視野に対応」
NEWSポストセブン
山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン