国内

女性宮家・女性天皇の是非 欧州では女性君主が次々誕生、男系男子の伝統を守る意味はあるのか

女性皇族のあり方について識者3人が議論(撮影/JMPA)

女性皇族のあり方について識者3人が議論(撮影/JMPA)

 昨年は皇室関連のニュースが世間を賑わせた。なかでも注目を集めているのは成年皇族として公務を開始した愛子さまだ。そんななか、女性宮家の創設を求める声も上がっている。女性皇族のあり方について、皇室に詳しい王室ジャーナリストの多賀幹子氏、国際政治学者の三浦瑠麗氏、ニューヨーク州弁護士の山口真由氏に語ってもらった。【全3回の第2回。第1回から読む

 * * *

女王の時代

三浦:皇室の存続自体も懸念されます。現状では天皇は男系男子しかなれず、女性皇族は結婚すると民間人になる。このままだと皇族が減って皇室が持続不可能になるため、女性宮家の創設を求める声があります。これは女性皇族が結婚しても皇族として残り、夫も子供も皇族となる制度ですが、女性皇族が結婚後も皇室に残ることを「選択」できるとするなら、男性皇族はなぜ民間人になる道を選べないんだという声も当然出てくるでしょう。

山口:世間から猛反発されるだろうけど、私は皇室の方々の「個人の意思」を尊重する最近の風潮に疑問があります。もちろん権利は大事ですが、義務のほうが大きいのでは。宮家は常に天皇家を支え、いざとなったら天皇家のスペアになる立場です。皇室典範に特例を加えて、臣籍降下した宮家のお子さんを皇族の養子に迎えるのはどうでしょう。

三浦:今の時代、子供の意思に関係のない養子縁組は無理筋でしょう。どうしても男系男子を維持したいのなら、女性天皇を認めたうえで、女性皇族と旧宮家の男子が結婚するほうがまだしも人道的と思います。いずれにせよ、皇族になる民間人は男女問わず厳しいセレクションを行なうことになるんでしょうけれど。

多賀:一般社会では男女平等の努力が進められているのに、王室の継承権を男子優先のままにするのはおかしいとして、王位継承権を長子優先に変えた欧州の王室では、スウェーデンもノルウェーもオランダもベルギーも君主の第一子は女子が多い。近い将来、「女王の時代」がやって来ます。欧州の人は「なぜ愛子さまは天皇になれないの?」と不思議に思っています。

山口:仰る通りですが、法律論としては「法の下の平等だから女性が天皇になってもいい」という考えに違和感があります。天皇制は法の下の平等を否定するところで成り立ち、皇室の方々は基本的人権を享受する範囲を制限されている。

多賀:でも、世界がグローバル化して欧州で女性の君主が次々と誕生するなか、男系男子の伝統を守ることにどれほどの意味があるのでしょう。愛子さまを天皇にしないことが決まった時点で、世界経済フォーラム発表のジェンダーギャップ指数を持ち出す人がいるかもしれない。2021年版で、日本の女性は156か国中120位。G7のなかで最下位です。こうしたことと結びつけられる可能性がないとは言えません。

第3回に続く

右から皇室に詳しい王室ジャーナリストの多賀幹子氏、ニューヨーク州弁護士の山口真由氏、国際政治学者の三浦瑠麗氏

右から皇室に詳しい王室ジャーナリストの多賀幹子氏、ニューヨーク州弁護士の山口真由氏、国際政治学者の三浦瑠麗氏

【プロフィール】
多賀幹子(たが・みきこ)/1949年生まれ、東京都出身。ジャーナリスト。お茶の水女子大学文教育学部卒業。英米に10年以上在住。英王室を始め、女性、教育、海外文化などをテーマに取材、執筆、講演。近著に『孤独は社会問題』(光文社新書)。

三浦瑠麗(みうら・るり)/1980年生まれ、神奈川県出身。国際政治学者。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。株式会社山猫総合研究所代表。近著に『日本の分断』(文春新書)。

山口真由(やまぐち・まゆ)/1983年生まれ、北海道出身。NY州弁護士。東京大学法学部卒。財務省勤務を経て、2009~2015年、弁護士として法律事務所に勤務。現在は信州大学特任教授。近著に『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)。

※週刊ポスト2023年1月13・20日号

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン