貴乃花軍団のガチンコ相撲で満員御礼が

一方で、二所ノ関一門の関係者は違った見方をする。「貴景勝が貴乃花の弟子だからじゃないか。出羽一門や高砂一門の力士なら昇進していたよ」と話すのだ。 

 この関係者は「協会幹部が盛り上がらないのは、ここ数場所の土俵を盛り上げているのが旧貴乃花一門の力士ばかりだということもあるでしょう」と続ける。

「1月場所で優勝したのは貴乃花部屋の力士だった貴景勝だし、大関候補とされる4関脇4小結の中で先頭を走るのは“貴の乱”で貴乃花理事誕生のために水面下で動いた立浪親方(元小結・旭豊)率いる立浪部屋の豊昇龍です。昨年11月場所で平幕優勝を果たしたのは、時津風一門から貴乃花一門へ移った元関脇・寺尾の錣山親方の弟子である阿炎。1月場所終盤まで優勝争いをした平幕の阿武咲が所属する阿武松部屋は貴乃花一門の中核部屋だった。さらには、貴乃花に師事した佐渡ヶ嶽部屋の琴ノ若や琴勝峰が土俵を盛り上げる。貴乃花を追放した協会幹部としては面白いはずがないでしょう」

 皮肉なことに、かつての貴乃花一門の力士たちが土俵を盛り上げたことで客足が戻り、コロナ禍による収入減に苦しんでいた協会が助かっている構図がある。1月場所は土日だけでなく、平日にも満員御礼が出た。ある協会関係者はその背景についてこう見る。

「貴景勝は連日のように流血するし、土俵下にもつれながら転落したり、物言いがつくような際どい一番が激増している。これは貴乃花軍団が実践してきたガチンコ相撲そのもの。軍団のDNAを受け継ぐ力士たちが、貴ノ岩への暴行事件を起こすなどして貴乃花と敵対していた日馬富士が所属した伊勢ヶ濱部屋の翠富士、錦富士らと熱戦を繰り広げるのだから、面白い構図です。貴乃花ももう少し協会に残っていれば土俵の充実から支持が広がったかも知れないのに……と惜しむ声も聞こえてくるほどです」

 貴乃花が協会を去って5年。厳しい稽古を貫いてきた貴乃花部屋を中心とした旧貴乃花一門の力士たちが土俵を盛り上げるなかで、協会幹部は貴乃花の亡霊に怯えているのだろうか。

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