六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)

「暴力団は時代に勝てず、オール負け」

溝口:抗争は六代目山口組の一方的な勝利ですよ。だけども、勝ったはずの六代目山口組すら、この抗争において人数を減らしている。過去の抗争においては、喧嘩するたびに山口組は勢力を増大させてきたのに。

鈴木:組織を発展させた側が勝者と考えれば、六代目山口組は喧嘩には勝ったが、勝負に勝ったと言っていいのか断言できないところがある。一方神戸側の望みは、自分たちの生存を認めさせることです。組織を切り崩され青息吐息だけど、謀反者の存在は認めないと強硬姿勢一辺倒だった山口組は、神戸側を潰せなかった。自分たちの要求を通したのは神戸側なので、喧嘩に負けて勝負に勝ったと強弁できなくもない。

溝口:というより、今回の分裂抗争では六代目も組員数を減らし、神戸も減らし、絆會も減らし、岡山の池田組も組員数を減らしている。でも同時に他団体……稲川会や住吉会などの広域暴力団も組員を減らして縮小しています。要するに暴力団は時代に勝てず、オール負けなんです。

鈴木:たしかに合理性だけを考えれば、10年前のあのときに、喧嘩なんかしてる場合ではなかった。暴力団社会全体が衰退している中、抗争に突入するのは自殺行為というか、警察の思うつぼでした。

溝口:山口組だって、昭和の山一抗争のように劇的な喧嘩が出来ないのは分かりきっていた。高山さんはこれまでの六代目山口組を作ってきた功労者だけど、抗争を回避するという大局観はなかった。ただし、これは他団体にもいないんです。唯一考えておったのは絆會の織田絆誠会長ですよね。しかしながらあまりにも小勢力だった。

鈴木:もはや暴力団という今までの形で生き延びていくのは難しいという時代の中で、山口組も否応なく変わっていかざるを得ない。警察はなんでもかんでも「トクリュウ」と言い過ぎですが、半グレなど新しい形態の犯罪組織のほうが時代にマッチしている。

溝口:今はトクリュウのほうが経済規模は大きく、勢いもある。ただトクリュウはヤクザに取って代われません。ヤクザは男を売り出す稼業だけど、トクリュウは「俺を隠す」商売です。顔を売りようがない。暴力団社会の山口組のように権威を持った巨大組織は誕生しないわけです。

後編に続く

【プロフィール】
溝口敦(みぞぐち・あつし)/1942年生まれ、東京浅草出身。ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション大賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『ヤクザ崩壊 浸食される六代目山口組』(講談社+α文庫)など著書多数。

鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年生まれ、北海道出身。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。

※週刊ポスト2026年1月16・23日号

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