2001年5月場所で優勝を決めた横綱・貴乃花(写真/共同通信社)
志らく:豊昇龍は朝青龍(第68代横綱)と比べると、やっぱりまだ脆い。興行的に早く横綱がほしいからと昇進させた協会側の事情が、相撲の脆さに出ている気がします。
そういうなかで大の里がちょっと不幸なのは日本の力士でいいライバルがいないことでしょうか。落語でも切磋琢磨できるライバルがいるかいないかで全然違う。私には先輩だけど年下の談春さんがいて、2人で一緒に出世していった。談志にも古今亭志ん朝、五代目圓楽がいた。相撲の歴史を見ても、いい力士には必ずライバルがいます。
貴乃花:王鵬は候補ですが、お父さん(元関脇・貴闘力)が協会の悪口を言い過ぎる(苦笑)。それが王鵬のプレッシャーになってしまっているように思います。
義ノ富士もそうですが、学生相撲出身がすぐに通用するのも問題です。それだけ叩き上げの力が落ちている。昔は叩き上げが死ぬ気で学生出身に向かっていたから、学生出身は横綱や大関までなかなか上がれなかった。今は逆転しています。
志らく:漫才は吉本にしろワタナベにしろ、新人はスクールに入学して芸を教わっています。でも落語の世界にはいまだに「弟子にしてほしい」と来るわけです。そんな修業は無駄という声もありますが、効率の問題じゃない。寿司職人にしたって、無駄かもしれないが10年不条理なところで修業をする。そうすると人間ができてくる。相撲の世界も同じだと思う。
貴乃花:師匠のもとでの修業の時期がないと、いずれ育った時に大きな失敗をします。雑巾掛けくらいはやったほうがいい。私も修業時代、親方の子供で入って特別扱いされていると見られるから、ほかの人の何倍も掃除をしました。四つん這いになる雑巾掛けをすると、一番体が強くなるんです。
(第3回へ続く)
【プロフィール】
貴乃花光司(たかのはな・こうじ)/1972年、東京都生まれ。1988年初土俵。最年少幕下優勝はじめ数々の最年少記録を打ち立て、1990年代に“若貴フィーバー”を巻き起こす。1994年、第65代横綱に昇進。2003年に引退し、一代年寄として貴乃花を襲名。貴乃花部屋を設立し、協会理事を4期務めたが、2018年相撲協会を退職した。
立川志らく(たてかわ・しらく)/1963年、東京都生まれ。1985年立川談志に入門。1988年二つ目、1995年真打に昇進。現在、弟子18人を抱える。落語家にとどまらず、映画監督(日本映画監督協会所属)、映画評論家、エッセイストと幅広く活動する。TBS系列『ひるおび』でレギュラーコメンテーターを務める。
※週刊ポスト2026年1月16・23日号
