戦後はGHQが靖国神社を監視下に置いたことも(1945年9月、共同通信社)

戦後はGHQが靖国神社を監視下に置いたことも(1945年9月、共同通信社)

「思想」と「イデオロギー」が政治と宗教の接着剤の役割を果たす 

 戦後、政教分離と信教の自由という2本柱が打ち立てられ、宗教法人法が改正されてなお、政治と宗教の関係は切っても切れないものだ。実際、日本には伝統的な仏教系やキリスト教系、それ以外の新宗教を含めて多様な宗教団体があり、さまざまな角度から現実の政治にかかわっている。 

 そうした宗教団体と政党は利害が一致すると薬師寺さんは指摘する。 

「政党としては、宗教団体と一緒に活動すれば選挙のときに票を入れてくれる人が一気に増えます。宗教団体とすれば、政党を通じて自分たちのやりたい目標を実現するとともに選挙を通じて信者を増やすことができる。 

 いまは政党と宗教団体の利害が対立するのではなく、一致するから協力できる時代です。過去のように武力をバックに布教して支配するのではなく、政治と宗教が手を結び、選挙を通じて望みを実現するのが現代の特徴です」 

 その際、政治と宗教を結びつける“接着剤”となるのが「思想」や「イデオロギー」だ。 

「保守的な思想を持つ政治家は保守的な宗教団体とくっつきます。特に皇位継承のあり方において、男系男子を遵守するといったイデオロギー色の強い主張をする宗教団体は、特定の保守的な政治家や政党とつながりやすい。 

 たとえば、安倍晋三元首相銃撃事件で宗教2世が問題視された旧統一教会は、共産主義や共産党に激しく敵対する思想を持つ宗教団体です」(島田さん) 

 戦前に国家と神道が結びついて戦争に突き進んだ反省から、日本では政治と宗教は近づいてはいけないという風潮が根強い。 

 だがノンフィクション作家の広野真嗣さんは「政治と宗教が協力してできることもある」と話す。 

「戦後民主主義において、政教分離の原則が強調されてきました。しかし、経済合理主義や儲け至上主義が行きすぎると社会に勝ち組と負け組の格差が広がります。そこで置いてきぼりにされる高齢者や子供といった社会的弱者に手を差し伸べ、取り残さないようにするのは宗教や政治のひとつの役割ではないでしょうか。 

 宗教が特定の政党を支援することは認められており、福祉や育児などの社会的な分野で、宗教が政治を後押しして問題解決に向かうことは間違っていないと思います」 

 現に困っている人を助けるため政治と宗教ができることがあるかもしれない。 

他方、政治と結びついた宗教団体が具体的に力を発揮するのが選挙活動だ。 

「票集めや寄付などによる集金に加えて、大きな意味を持つのが選挙区でのボランティア活動です。 

 選挙カーの運転やポスター張り、有権者に向けた勧誘電話などを無償で行ってくれる人は候補者にとって非常にありがたい。特に旧統一教会から一部の議員に派遣されてきた信者は熱心で真面目かつ礼儀正しく、重宝がられたと聞いています」(広野さん) 

 なぜ、信者たちはそこまで熱心に選挙活動に励むのか。薬師寺さんは「選挙活動イコール宗教活動」だと論じる。 

「信者たちは団体の上の人間から『この候補者はこれだけ素晴らしい。この人を当選させることであなたは報われます』と指示されます。信者にとって選挙活動は宗教活動と同じゆえ、純粋な気持ちでボランティアに励みます。 

 逆にいえば、候補者が落選したら自分の活動が足りなかったことになるため、信者らは懸命に選挙活動を行うのです」 

 政治と近い宗教団体は日本にどれほどあるのだろうか。宗教専門誌『宗教問題』編集長の小川寛大さんが主な宗教団体を解説する。 

「たとえば公明党の支持母体である創価学会で、学会員らは“宗教的なお祭り”として毎回の選挙に臨みます。また、日本の新宗教団体として創価学会に次ぐ規模を持つとされるのが立正佼成会で、初代会長でカリスマ指導者だった庭野日敬氏は『アンチ創価学会・アンチ池田大作』の姿勢を貫きました。 

 関連団体の神道政治連盟を通じて長く自民党支持を続ける神社本庁や、日本陸軍の将校だった岡田光玉氏が創設した崇教眞光、石原慎太郎氏が信者だった霊友会は保守的な宗教団体として知られます」 

 ほかには、奈良県天理市に本拠地があり高市首相と関係が近いとされる天理教、関係するPL学園高校の野球部が有名だったPL(パーフェクトリバティー)教団、“エル・カンターレ”こと大川隆法教祖の存命時代に政治団体「幸福実現党」を設立し、国政選挙にたびたび挑戦した幸福の科学などがある。 

 各団体は自分たちの影響力を発揮するため、思想が近い政党に接近する。 

「既存の新宗教団体は創価学会と対立することが多く、その筆頭である立正佼成会が中心になって新宗連(新日本宗教団体連合会)が結成されました。かつての新宗連は創価学会・公明党に対抗するため自民党を応援しましたが、1999年に自公が連立してねじれが生じた。以降、立正佼成会は自民党からは距離をおき、民主党を応援したりしましたが、一方では自民党候補を支持したりと方針はかなり曖昧になってしまいました」(島田さん) 

 保守政党と親和性が高いことも宗教団体の特徴だ。 

「崇教眞光や世界救世教などの新宗教の多くは自民党を支持しました。一方で社会党や共産党を支持する宗教団体はほとんど目立ちません」(薬師寺さん) 

(後編に続く) 

※女性セブン2026年2月12日号 

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