芸能

半沢フィーバーの裏で山Pドラマ絶賛する声を女性作家が分析

 今クールのドラマで突出した注目を集めるのは『半沢直樹』だが、一方でフジ月9の恋愛ドラマのほうが「リアルだ」という声も出てきている。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析する。

 * * *
 夏ドラマもいよいよ終盤を迎えようとしている今。スタート時は、堺雅人主演『半沢直樹』(TBS日曜午後9時)と、満島ひかり主演『Woman』(日テレ水曜午後10時)が、Twitter上で特に熱い話題を集めている、と分析されていました。

 それから約2か月が過ぎ……『半沢直樹』『Woman』、ともに回を重ねても視聴者の関心が離れることなく、大きな注目を集め続けているようです。『半沢直樹』の「銀行」、『Woman』の「シングルマザー」。2つのドラマは現実にある題材を扱っているために、「リアリティがあって面白い」と語られがちですが、それは本当でしょうか?

「上司にたてつくのはほぼ不可能」とされる大手銀行組織の中で、「倍返しだ!」と叫ぶ半沢直樹の過激な言動と行動様式は、もしかしたら「リアリティ」から遠く離れている--そう言えないでしょうか?

 だからこそ、ヒーロー。スカッとして気持ちいい。現代の「水戸黄門」との呼び声も。

 一方の『Woman』では、シングルマザーの抱える経済的厳しさが浮き彫りになる。生活保護が受けられず過酷なバイトにあけくれながら必死に子育て。その上に深刻な病気・再生不良性貧血を発症してしまう。

 夫は痴漢容疑をかけられてホームから転落死。実母とは複雑な家族関係で折り合いが悪く、義父は川へ落ちてしまい--これでもかこれでもか、という困難と苦悩と不幸の連鎖。「リアリティ」というよりも、過剰な刺激的世界。その意味では、平成版「おしん」と言えるのでは。

『半沢直樹』『Woman』は、「水戸黄門」と「おしん」。つまりリアリティとはむしろ反対の、「刺激的なディフォルメ」こそが魅力のドラマ。それが視聴者の気持ちを引っ張る原動力にもなっている、と思うのです。

 もし、ドラマの「リアリティ」、「現実味」を問題にするのならば、別のドラマに注目すべし、という意見があります。フジ月9、ジャニーズ・山下智久主演の恋愛ドラマ『SUMMER NUDE』にこそリアリティがあると絶賛する声が。

 このドラマ、山下智久、香里奈、戸田恵梨香が織りなす甘く切ない「夏の大三角関係!」と銘打たれています。海辺で繰り広げられる、恋愛模様。私はあの人が好き。でも、その人はまた別の人を想っていて、想われている人はまた別の人を……といった「感情のすれ違い」が細々と描かれていく。

 ネット上掲示板では、中味が無いとか、ウダウダしすぎ、という酷評も目立つ一方で、このドラマこそリアリティがあるとは? ちょっと意外なその意見に耳を傾けてみましょう。

「さしたる大事件はおこらない。ただ、男女間の微妙な心の揺れ、相手の心のうちを読みあい、あの人はこう想っている、私は身を引くべきだけれど、もしかしたらあの時の目つきは私のことを好きかも……的な、ぐじゃぐじゃ、ウダウダ、はっきりしない感情の揺れが満載です。そこがいいんです。それこそがリアルなんですよ。特にA型人間の感覚と重なる。日本人に多いA型的性格にとっては、目が離せないドラマなんです」

 たしかに普通の人の日常に、さしたる事件はおこらない。水戸黄門もおしんもいない。けれど日々、あの人は私をどう思っているのか、私はあの人が嫌いだけれど、あの人は私をどう感じているの、もしかしたら……といった感情の探りあい、空気の読みあいに膨大な時間を費している現実はある。

 マメな性格でよく気づく。けれど慎重になりすぎて必要以上に用心深い。あれこれ余計なことばかり考えてしまうA型的人間のリアリティ。

『半沢直樹』『Woman』に比べて、『SUMMER NUDE』の「グダグダ」「うじうじ」描写はリアリティいっぱい、という意見、なるほどとうなずけるものがあります。

 月9は昔、王道でした。男と女が互いに微妙な心を読み合うトレンディ・ドラマは、まさしくメジャーでした。しかし今や、トップを激走するのは『半沢直樹』。

 ドラマ人気の変化は、時代の変化とパラレル。社会の変化を映す鏡、なのかもしれません。今の日本に、いかに水戸黄門が待たれているのか、という証でしょうか。

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