芸能

石坂浩二 権力者を演じる時は孤独を味わうために挫折を探す

 役者・石坂浩二の当たり役として思い浮かべるもののひとつに、将軍や大学教授、社長など権力者の役がある。そういった権力をもつ者を演じる時に必ずしていることについて石坂が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 石坂浩二は大河ドラマでは『元禄太平記』の柳沢吉保、『草燃える』の源頼朝、近年では『白い巨塔』の東教授や映画『沈まぬ太陽』の航空会社社長など、権力者の役を演じることが多い。

「権力者を演じる時は、彼らが挫折する場所を探すようにしています。観る方は気付かなくとも、演じながら権力者の孤独みたいなものを味わってみたいんですよ。しかも権力のあり方が違うから、同じ権力者でもそれぞれに演じる面白さがあります。

 吉保も頼朝も、最後は何一つ思い通りに行っていないように思えます。特に頼朝は、鎌倉に幕府は作ったものの、京都に帰りたいという気持ちが凄くあったんだと思うんです。それを義経に先にやられたことが許せなかった。京都に帰れないまま鎌倉で死んでいくことは、やはり辛いんですよ。だから、反転して天皇家と対峙していく気持ちが強くなっていった。

『白い巨塔』はまさに挫折していく権力者ですし、その挫折から立ち上がっていくのが素晴らしい。

 そうやって準備段階で役のことを知っていくと、演じる時の安心感になるんです。第一声を発する時に『俺はコイツを全て知っているぞ』と言い聞かせていないと不安になる。これをプロセス的にやっておくと、後は自由にやることができます。

 十七代目の中村勘三郎さんからも、そういうことを教わりました。『役を作れば、セリフはひとりでに出てくるんだよ』と。勘三郎さんは『セリフは覚えなくていい』とおっしゃっていました。実際、立ち稽古の段階になっても、プロンプターがセリフを全て言うんですよ。ところが本番になったらちゃんと出てくる。そういうのを掴むのがお上手な方でした」

関連記事

トピックス

逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン