ライフ

【著者に訊け】『「私の履歴書」──昭和の先達に学ぶ生き方』

【著者に訊け】石田修大氏/『「私の履歴書」──昭和の先達に学ぶ生き方』/朝日新書/780円+税

 社内では「裏の看板企画」と、暗に呼ばれているとか。昭和31年の第1回、鈴木茂三郎(当時社会党委員長)以来、連載59年目に入った日本経済新聞「私の履歴書」。石田修大氏(72)は1980~1994年にかけて同文化部でこの企画執筆を担当。退社後は父・石田波郷の評伝を始め、執筆編集業に専念する氏が、総勢800人近い歴代登場者の半生を独自の切り口で読み直したのが、本書『「私の履歴書」──昭和の先達に学ぶ生き方』である。

 各界の名士たちにも恋や進路に悩んだ青春期があり、それらを〈横並び〉にすると見えてくるのは、歴史と呼ぶにはまだ生々しい時代や生活や戦争の実相だった。例えば──。

〈神戸の女学校に通っていた作家、佐藤愛子は太平洋戦争のさなかでも学校生活をエンジョイし、付け文を押しつける男子学生を「非国民!」と怒鳴りつけていた。そんな女学生がいっぱいの阪急電車で通っていたレンゴー社長の長谷川薫は、間もなく特攻機で沖縄に出撃、突然、目の前を弾丸が下から突き抜け、搭乗機は海に墜落していった。

 その頃、米軍の絨毯爆撃で焼け野原になった大阪では、女学生だった作家、田辺聖子の家に近所の大人が集まり、「こら、もう、あきまへんデ。日本、バンザイでんな」などとヒソヒソ話をしていた〉……。

「元々『「履歴書」のおっかさんだけを本にしても面白いね』って、よく社内でも話していたんですよ。特に明治の母は強くて働き者、一方男は相場に手を出して身代を潰したり、ダメ親父がやたらに多い(笑い)。

 ところが僕は自分の過去の仕事に執着がなくてね、実は『履歴書』も文化部に移る前は全く読んだことがなかった。ただ今回初期のものも含めて読んでみたら、森繁久彌の悪所通いとか、中村鴈治郎が14歳で純潔を捧げた相手との後日譚とか、今は自主規制しそうな泥沼の三角関係や足の引っ張り合いも平気で書いているし、昔のものほど断然面白い! そこで母、恋、戦争等々6つの観点から、約60年分を再編集してみました」

関連記事

トピックス

真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
国内統計史上最高気温となる41.8度を観測した群馬県伊勢崎市。写真は42度を示す伊勢崎駅前の温度計。8月5日(時事通信フォト)
《猛暑を喜ぶ人たちと嘆く人たち》「観測史上最高気温」の地では観光客増加への期待 ”お年寄りの原宿”では衣料品店が頭を抱える、立地により”格差”が出ているショッピングモールも
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン