「松本さんや紳助さんのように頂点まで登りつめた人ならともかく、歴代M-1王者はまだ競争のさなかにいる人たちですから、自分たちのハードルを上げるような厳しいことを言いづらかったという事情は確かにあると思います。でも、だからと言って厳しい点をつけないわけではありませんでした」
ジャッジはあくまでシビアだったと、ラリーさんは言う。では、満足感が得られなかった人に向けては何が足りなかったのだろうか?
「これまでの審査員はコワモテで権威のある人が多く、彼らに『つまらない』と言われた芸人は二度と立ち直れないんじゃないかというピリピリムードがありました。緊張感を求めていた視聴者にはそこが物足りなく感じたのかもしれませんが、5年前と違って今は安心してテレビを観たい人が増えているので、ちょうど良かったんじゃないでしょうか」
今年のM-1の視聴率は、関東地区17・2%、関西地区21・4%。前回を下回ったとはいえ、テレビを取り巻く環境や、開催時期(従来は12月20日以降)が異なることを考えれば、好視聴率だったという評価もできる。
「もう一つ、審査員の特徴として、『自分ができないことは言わない』『できることは言う』という傾向がありました。中川家の礼二さんが、ジャルジャルさんのネタに対して、”大きなネタの枠があれば漫才らしくなった”と指摘したのは『自分はそれができている』という自信があったからこそだと思います」
来年以降も同じような形でM-1が開催されるのであれば、王者といえど芸を磨いて「できること」を増やしていくことが求められそうだ。