宇多田と藤の関係は世間の母娘とは異質だった。藤は1982年に宇多田照實氏(68才)と結婚。翌年に出産し、3人は日本各地を愛車で旅する自由な生活を満喫する。そんな生活が変わったのは1998年。宇多田のデビューがきっかけだった。
ファーストシングル『Automatic』が200万枚を売り上げ、翌年発売のアルバムは900万枚を突破。空前の宇多田ブームを前に両親の関係も変わっていった。
「宇多田さんのプロデュース方針を巡り、ふたりは激しくぶつかりました。一変した家族関係を寂しく思う気持ちも強く、宇多田さんは徐々に、両親と距離を置くようになりました」(前出・芸能関係者)
2002年に宇多田が映画監督の紀里谷和明氏(48才)と最初の結婚をすると、藤は縁を切るようにひとり放浪を始める。藤が自殺した当時も、母子は疎遠だったという。
絶望に沈む宇多田にとって、一筋の光となったのが恋人の存在だった。宇多田は現在の夫であるイタリア人バーテンダーのAさんと2014年の2月に再婚。翌年夏、長男(1才)を出産した。これが人生の転機となったと番組で語っている。
「もし子供がいなかったら、多分アルバムを作ったり、仕事を始めようと思えてないです。自分が親になって、子供を見ていると、自分の空白の2~3年が見えてくる。あぁ、私こんなんだったんだな、こんなこと親にされてたんだなって。それって結局、親に対する感謝と、自分がどこにいるのか見えた瞬間なんです」
子供の存在が、母の死を乗り越える力を宇多田に与えたのだった。
一方で、宇多田を複雑な思いで見つめる人もいる。藤の実兄、藤三郎氏(66才)である。三郎氏は藤が自殺した当時、照實氏の意向により、妹の遺体と面会することができなかったことをメディアで告白。その後も通夜、葬儀さえ行われない事態に異を唱えてきた。藤の命日を控えた8月19日、女性セブンの取材に三郎氏はこう話した。
「私はいまだに何にもわからんままです。遺骨のことも知りません。散骨したらしいって聞いても、向こうからは一切連絡ないから。もう全然、どうなってるのやら」
番組では、4月に活動を再開した宇多田が最初に発表し、NHKの『とと姉ちゃん』の主題歌にもなった『花束を君に』も、母への気持ちを歌った楽曲なのだと明かされた。
※女性セブン2016年10月13日号