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【書評】週刊文春の元エース記者が知られざる舞台裏を公開

【書評】『スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ』中村竜太郎/文藝春秋/1296円

【評者】伊藤和弘(フリーライタ―)

〈週刊誌記者はスクープを追う犬だ。権力者の不正をかぎ分け、スキャンダルを暴く。ときには牙をむいて吠え、ときには石もて追われ悲鳴をあげる。闇夜を走り、駆け抜けて、また走る。疲れても、傷を負っても、力尽きるまで走り続けるのだ。けれど、こんなに面白い仕事は、ない〉

 新聞やテレビが報じない衝撃的なスクープを次々と放ち、世間の注目を集めている「週刊文春」。どうしてスクープを連発することができるのか? 同誌の“エース記者”として、20年にわたって活躍してきた中村竜太郎氏が知られざる舞台裏を公開した!

 著者が同誌の専属記者を務めたのは1995年から2014年まで。その最初の年に「地下鉄サリン事件」が起こり、2001年には「アメリカ同時多発テロ事件」でニューヨークに飛んだ。2004年の「NHK紅白プロデューサー巨額横領事件」、2013年の「シャブ&飛鳥事件」、2014年の「高倉健の養女発見」など、20年の間に大きなスクープをいくつも掘り当てている。

 同じ記者でも、新聞記者に比べると週刊誌記者はどこかヤクザなにおいがつきまとう。いまだに「週刊誌の記事はいい加減」というイメージを持っている人も多いかもしれない。だが本書を読むと、決してそんなにいい加減な仕事ではないことがわかるだろう。

 うかつな記事を書けば、すぐに名誉毀損などで訴えられる時代。芸能人のスキャンダルでも、ちょっと噂を聞いただけで記事にするようなことは絶対にしない。外部の人間なら「そこまで?」と思うほど慎重に取材を重ね、確実な裏付けを取っていく。最終的には会長が辞任するほどの問題に発展したNHKの巨額横領事件のときなど、記事にすることが決まるまで、著者は水面下で半年間も取材を続けていたという。もちろん毎週締め切りがある日常の激務をこなしながら、だ。

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