◆「アフリカに移り住めばいい」
2011年からはアイディアと行動力を持つ人間を業務委託的に雇って、資金と実働チームを託して働いてもらう「亀チョク」という仕組みを作った。「亀チョク」から実現したのが、オンライン英会話事業などだ。
「実現した事業の3倍は失敗している」と亀山は語るが、チャンスがありそうな事業に資金を惜しみなく投じる姿勢の証左である。自社が得意とする事業分野に集中的に投資する「選択と集中」とは、真逆の経営戦略といえる。組織が大きくなっても“人通りが多い道があったら取りあえず露店を出す”ゲリラ的な商売は変わらない。
「商売を続け、家族や社員を路頭に迷わせないためには、お金を貯め込まず、あるうちに新しいことをやった方が楽なんですよ。商売がダメになってから新しいことをはじめては遅い。レンタルビデオ屋にずっとこだわっていたら滅びるしかなかったはずですから」
DMM.comのゲーム開発の責任者はレンタルビデオ店を経営していた時期に店長だった人物だという。
「努力してスキルを磨けば、レンタルビデオ屋もゲーム業界で生き残れるんです。インターネットだって、あと10年先どうなるか分からない。だから結果的に新たな商売を次々に手がける形態にならざるをえなかった。いまの業種がダメになっても、次の業種にみんなで移り住めばいいわけだから」
──次の業種に移り住む、ですか。面白い表現ですね。次はどんな事業を?
「昔は自分のことで手一杯だったけど、最近はゆとりができて社会的なことも考えるようになってきた。いま学校をはじめようと考えているんです」
──学校ですか?
「うん。たとえば、頭はいいんだけど家が貧乏で大学に行けないような連中を社員として雇って、うちの仕事をさせて給料を払いながらビジネスを教えるような仕組みを作るとか」
──戦後、中卒の子を雇って夜間高校に通わせながら働かせる企業も多かったですね。
「ただね、昔の日本では単純作業の効率性を高めるような教育だったわけでしょう。いや、いまもそうかもしれないけど……。効率性を高めてもロボットには敵わないし、作業の価格もどんどん安くなっている。会計士の仕事だって、パソコンやロボットにとって代わられていくんだから。必要なのは、自分で考える能力やビジネスの発想だと思うんですよ。それを教えるような学校ができれば、と」