スタッフ、キャストともにスキのない布陣であり、木村拓哉さんへの注目度で初回視聴率が上がるようなら、そのまま他作品を置き去りにして独走態勢に入っても不思議ではないでしょう。
一方、『カルテット』もスタッフとキャストの豪華さでは負けていません。松たか子さん、満島ひかりさん、松田龍平さん、高橋一生さんの演技派4人でメインを固めるのは連ドラとして異例であり、意欲のほどがうかがえます。
脚本の坂元裕二さんは、『Mother』(日本テレビ系)、『Woman』(日本テレビ系)、『最高の離婚』(フジテレビ系)など、オリジナルにこだわる日本屈指のヒットメーカー。会話劇に定評があるだけに、『最高の離婚』のような「4人が迫真の演技でぶつかり合う」シーンが期待されます。
演出の土井裕泰さんも、古くは『青い鳥』(TBS系)、『GOOD LUCK!!』(TBS系)、最近でも『コウノドリ』(TBS系)、『重版出来!』(TBS系)、『逃げるは恥だが役に立つ』を手がけるなど百戦錬磨。今作では、TBSの連ドラに初めて坂元裕二さんを招へいしてチーフプロデューサーも兼務するなど、その意気込みには並々ならぬものがあります。
「30代の男女4人が偶然出会い、ともに弦楽器を演奏できることから四重奏カルテットを組み、共同生活をはじめた。しかし、“全員秘密だらけ、全員片想い”という異質な状況になっていく……」という物語も、ミステリアスかつ波乱含みで興味をそそります。『逃げるは恥だが役に立つ』のように、徐々に視聴者の関心を集めて視聴率を上げていくかもしれません。
昨年TBSは、等身大の人間模様を丁寧に描いた『家族ノカタチ』『重版出来!』、シリアスなテーマに挑戦した『わたしを離さないで』『砂の塔 ~知りすぎた隣人』、徹底したエンタメで楽しませた『99.9%』『逃げるは恥だが役に立つ』、ポップなラブストーリーで女優の魅力を引き出した『ダメな私に恋してください』『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』など、さまざまなタイプの力作を次々に投入することで「視聴者の信頼を得よう」としてきました。
そんな地道な努力で芽生えた信頼関係は、簡単に揺らがないでしょう。少なくともここで挙げた『A LIFE』と『カルテット』は高品質必至だけに、冬ドラマの中心となり、3月まで私たちに話題を提供し続けてくれる気がします。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。