この時、北朝鮮側からの代議員全員が間違いなく金正恩氏に投票するが、懸念されるのは韓国サイドだ。韓国の代議員に一人でも従北勢力がいれば、統一朝鮮に金正恩大統領が誕生する可能性がある。
現在、韓国人の多数が日米や中露に干渉されない南北和解のプロセスを世界にアピールしたいと思っている。自分たち同士で民族統一をなし遂げるという夢に酔ったとき、韓国人は金正恩氏が指導者になることに違和感が薄れるだろう。
北朝鮮主導で統一された朝鮮半島は日米同盟を敵視するだろうし、中国と一緒になって日本に対して歴史認識の転換を迫る。このシナリオを荒唐無稽と片づけることができるだろうか。
●たけさだ・ひでし/1949年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、防衛省防衛研究所(旧・防衛庁防衛研修所)に教官として36年間勤務。その間、韓国延世大学に語学留学。米・スタンフォード大学、ジョージワシントン大学客員研究員、韓国中央大学国際関係学部客員教授を歴任。2011年、防衛研究所統括研究官を最後に防衛省を退職。その後、韓国延世大学国際学部教授等を経て現職。主著に『東アジア動乱』(角川学芸出版刊)、『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所刊)、『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか』(PHP研究所刊)などがある。
※SAPIO2017年2月号