◆事務所がすべてやってくれる日本とは違う

 組合員であれば、飛行機を使うときには、8時間以上はファーストクラス、3時間ならビジネスクラス。また1日の労働時間や、金曜は何時以降は仕事をしてはいけないなど細かい規定もあり、例えば撮影が長引くと何倍もの追加料金が請求されるという。

「アメリカにも芸能プロのようなものはあるんですが、取材を受ける時などは基本的にはパブリシストという広報係との個人契約。芸能プロが窓口にはなりますが、実際に管理するのはパブリシストという人たちなんです。優秀なパブリシストになると、たくさんの俳優を抱えています。事務所がすべてやってくれる日本とは大きな違いです。

 そのパブリシストも優秀な人になればもちろん高額な報酬を支払わなければいけません。ヘアメイクもボディーガードも、芝居のためのレッスン代もすべて自分でお金を払ってやらなくてはいけません。日本の場合は、俳優がすべて事務所任せにしてしまうから、そういういわゆる“投資”という部分が見えにくくなっているんです」(佐藤さん)

 先日『クローズアップ現代+』(NHK)で「芸能人が事務所をやめるとき」と題された特集があった。同番組に出演した、爆笑問題などが所属する芸能事務所『タイタン』の社長・太田光代(52才)は、アメリカの俳優は、「売れる前にいろんな努力をする」事務所の役割を自ら担うことになると解説した。

 SAGが認めた仕事をすることが組合員になる条件だが、まったくの新人はどうしていくのか? 新人は蚊帳の外かと思いきや、違う。そこで登場するのが、SAGと契約している製作プロダクションだ。

「1980年代、当時活躍していた女優のジェーン・フォンダたちはいい役に恵まれないからと自分たちで製作プロダクションを作りました。芸能プロではなく製作プロ。例えばアカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』の製作は『プランBエンターテインメント』というプロダクションですが、これは俳優・ブラッド・ピットの製作プロダクションです。自分が映画に出演しなくても映画のプロデューサーをやったり、自分のためだけじゃなく、映画界のためにという大きな考えでプロダクションを作ってるんです。

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