◆中国資本との不透明な関係
クシュナーはもともと、司法関係に進みたかったらしい。ハーバード大で美術を学び、卒業後、ニューヨーク大でMBA(経営学修士)と法学修士を修得。ニューヨーク州検察官事務所でインターンをしていたが、そのころ、祖父の代からの不動産会社を経営していた父チャールズが脱税で逮捕、2年間の懲役刑で投獄。長男のクシュナーが「クシュナー不動産」の会長職を引き継ぐことになった。
クシュナーは父が釈放されてからも会長職を継続。本来ならば、司法の道に入るはずだったクシュナーには天賦の経営の才能があったようで、これまでの10年間で1200件ものプロジェクトを手がけ70億ドルの売り上げを上げたという。
しかし、その内実はというと、「火の車」らしい。同紙によると、負債額は38億ドルに達している。苦境のクシュナーに救済の手を差し伸べたのが呉なのだ。呉にとっても米大統領の娘婿やそのファミリーに食い込む、またとないチャンスだ。ビジネスでも、マンハッタンの中心部の最高級物件への投資だけに悪い話ではない。
11月16日の密会は、クシュナーがホワイトハウス入りした後の算段を話し合う場だった。そこには父親のチャールズらもいた。その1週間後の23日、同じ場所で、呉はチャールズらとランチをともにした。その後、呉は喜色満面の笑みを浮かべて、チャールズらを見送り、「皆さんは愛すべき人物だ」と独り言を口にした。交渉は上首尾だったことをうかがわせるエピソードだが、クシュナー不動産が呉の手に落ちた瞬間だったかもしれない。
いや、すでにクシュナーの手がけているビジネスには多くの中国資本が参画していることで知られている。クシュナーは昨年11月、ニュージャージー州ジャージーシティで、トランププラザに隣接する高層の高級マンションを完成させたが、建設費用の2億ドルの4分の1に当たる5千万ドルは中国資本であると伝えられる。とはいえ、クシュナー不動産では出資先を明らかにしていない。中国資本との不透明な関係だ。