「朴政権の判断は間違っています。韓日関係を真に良好なものにするためには、臭いものにフタをするかのような姿勢ではなく、真相の究明こそが求められているはずです。ただ、大統領選挙で新政権が成立すれば、我々の要求も認められるでしょう。8月15日の光復節に合わせて今度こそ龍山駅前に像を設置します。万が一、認められなければ、国民的な闘争が広がっていくだけです」
嚴局長は自信たっぷりにそう答える。それはそうだろう。5月9日に投開票される大統領選挙の最有力候補である文在寅「共に民主党」元代表は、民主労総をはじめとする労働組合を有力な支持母体としている。一昨年末の日韓慰安婦合意を破棄し再交渉するとの主張も掲げる。徴用工像の設置を認める可能性は高い。
嚴局長は、さらに仁川や済州島などにも徴用工像建設計画があると語る。民主労総の釜山地域本部では、釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像の横に建てることまで検討しているという。
総領事館前に慰安婦像だけでなく徴用工像までも。計画が進めば、日韓関係が抜き差しならぬ関係になることが誰の目にも明らかでないか。そう問うと、「私たちの活動は韓日関係を悪化させることが目的ではない。ぜひそれを理解してもらいたい」と繰り返す。
【PROFILE】竹中明洋●1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、『週刊文春』記者などを経てフリーランスに。近著に『沖縄を売った男』。
※SAPIO2017年5月号