ライフ

【著者に訊け】土田英生氏 小説デビュー作『プログラム』

土田英生氏が小説『プログラム』を語る

【著者に訊け】土田英生氏/『プログラム』/河出書房新社/1500円+税

 毎年春になれば桜が咲き、木々が芽吹いて、自然とはなんと律儀で健気なのかと、感心しきりの4月である。〈翻って人間はどうか?〉

 嘘や保身、見栄や嫉妬に汲々とし、〈本能というプログラム〉さえ壊れつつあると、先ごろ初小説『プログラム』を上梓した劇作家で演出家、土田英生氏は言う。

「“そこが面白くてカワイイ”と笑える段階を、今はもう、越えちゃってますね」

 舞台は東京湾上に浮かぶ、〈日本らしさ〉がテーマの人工島〈日本村〉。純粋な日本人以外はバッジ装着が義務で、安心安全を謳う夢のエネルギー〈MG発電〉の拠点でもあるこの島で、日本村四番駅駅員〈高島啓治〉やバツイチの同僚女性〈戸村〉らが繰り広げる、“とある1日”の群像劇を描く。

 その日。上空に〈赤い雲〉が浮かび、徐々に空全体を覆った。人々は永遠の眠りをもたらす奇妙な眠気に襲われるが、それでも無駄口を叩き妄想に走る。そんなありそうでなさそうなディストピア空間に、日本の今が透けて見える?

 劇団MONO代表として関西の演劇シーンを牽引し、近年は映画やドラマ脚本も手がける土田氏は今年50歳。学生時代に演劇と出会ってから、早30年を数える。

「劇団を続けていくのって大変なんです。何とか脚本の仕事で凌いではきたけど、テレビ局側の人間は年下が増える一方だし、この先どうしようと焦っていた矢先に、今回の小説のお話をいただいたんです。

 確かに昨年芥川賞を取られた本谷有希子さんとか、内面を描く劇作家は小説にも移行しやすいとは思う。ただ、僕の場合はモノローグよりダイアログというか、2人の人間がいたらその間の現象を書きたいんですね。

 例えば男女が別れ話をしていると、目の前の机をなぜか蜘蛛が通る。その違和感やマヌケさを含めた全体を描きたい時、芝居なら全体を見せられるけど、小説だとどうしても視点の問題が出てくるんです。すると全てを俯瞰できる神の視点を使う他なく、完成までは結局、2年がかりでした」

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン