「留置場時代に差し入れてもらった数十冊の中の一冊ですが、同房者全員が読破していました。私も半年に一度くらい読み返しています。最後にこの本を読んだのは平成28年10月18日でした。明確に覚えているのはその前日の最終弁論で、偶然、著者の金原さんの名が出たからです」(林被告)
名古屋地裁での弁論で、弁護人が無期刑の出所率について述べていた時に“31年で出所した1名がいる”ということに触れた。これを法廷で聞いていた林被告は、著者の金原氏のことだと気づいたのだという。
未決囚は裁判が確定すれば、拘置所から刑務所へ移送され、受刑者として日々を過ごすことになる。やがて来る刑務所生活に備えた本として、同書は拘置所のベストセラーとなっているのだ。
文■高橋ユキ(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2017年5月5・12日号