築地市場跡地は、日本で最も利用価値が高い土地である。銀座まで約800mしかなく、外側が晴海と勝どきで、それをすべて東京都が所有しているからだ。このエリアは東京都心に残っている最大にして最後のフロンティアであり、住宅地であれ、24時間ITタウンや金融街であれ、一体的に再開発したら莫大な価値になる。その利権争いの中心に浜渦氏がいたというのは、知る人ぞ知る話である。
ところが今回、その点を都議会もマスコミも追及していない。したがって、築地市場の豊洲移転問題に関する石原元知事や浜渦元副知事の責任については、今後の東京都を占う都議選の争点にはなり得ないと思う。
このまま争点があやふやな状態で都議選に突入したとしても、小池新党「都民ファーストの会」が圧勝し、公明党とともに都議会多数派を形成するという予想が大勢だ。
だが、それで何ができるのか? ただ単に多くの未熟な“小池チルドレン”が誕生するだけで、東京都庁という伏魔殿は本質的には何も変わらず、利権を貪る“頭の黒いネズミ”がいっそう増殖するだけだろう。
小池知事は、都議選に自身の政経塾「希望の塾」の塾生の中から都民ファーストの会公認で多数の候補者を擁立する考えを明らかにしているが、そもそも政治塾というのは、パナソニック創業者の松下幸之助氏が1979年に設立した「松下政経塾」を見ればわかるように、ある程度の成果が出るまでには優に20年かかる。
私が1994年に創設した「一新塾」も、23年経ってようやく国会議員が11人(事務局出身者4人を含む)、市長・町長が9人、地方議員が110人(事務局出身者1人を含む)を数えているが、残念ながら、まだ首相や都道府県知事になりそうな政治家は登場していない。