資産1500万円超の財産所持者には90%もの「財産税」が課されることになり、昭和天皇は33億4268万円を納めることになったのだ。

 さらに新しく制定された憲法では、〈すべて皇室財産は、国に属する〉ことが定められ、皇室による不動産保有は禁じられた。皇居など天皇家が使い続けるものは国有財産へと移管された。その結果、昭和天皇の私有財産は、「何か大きな出費に備えるため」という名目で金融資産1500万円が残されたほか、由緒物の美術品と宝石、身の回りの品だけになってしまったのである。

◆バブルで20億円に

 それから40数年後、昭和天皇が崩御した1989年、驚きの事実が明らかになる。その遺産は約20億円まで増えていたのだ。皇室経済に詳しい成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科教授の森暢平氏が解説する。

「主な要因は株式投資など資産の積極運用です。昭和天皇が自ら運用していたわけではなく、天皇家には『経済顧問』という私的なアドバイザーがいます。特に高度経済成長期には大いに資産を増やしたことでしょう。その背景には、昭和天皇の代替わりの儀式の費用面の懸念がありました。当時は公費で賄えるかどうか不確定な面があり、天皇と宮内庁幹部が私有財産から支出しなければならない事態に備えたのです」

 結果的に、総額42億円ともいわれる代替わり儀式は国費で行なわれたため、昭和天皇の懸念は杞憂だったといえる。

 約20億円の昭和天皇の遺産のうち、葬儀費用の一部と日本赤十字社への寄付5000万円を差し引いた上で債務を整理し、課税遺産額は18億6911万4000円となった。皇室ジャーナリストの山下晋司氏が言う。

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