たとえば、5月14日の阪神戦では右投手の藤浪晋太郎に対し、レギュラー捕手で左打者の戸柱恭孝、石川雄洋(二塁)を外し、右打者の嶺井博希(捕手)、田中浩康(二塁)を起用。右投手には左打者をぶつける常識を破った理由について、ラミレス監督は「藤浪は今シーズン、20四球を出しているが、そのうち15四球は右打者に対して出している」と具体的な数字まで挙げて説明した(※正確には21四球中16四球)。
嶺井と田中は合わせて6打席立ち、田中が1死球。この日の藤浪は計5死四球を与えたが、そのうち4死四球が右打者へのもので、1回の2失点には先頭の右打者・桑原将志への四球から始まった。2014年から8連敗中と苦手にする藤浪を打ち崩すことはできなかったが、監督として出来る限りの手を打った。今回の好調・筒香の3番起用も、常識破りの“奇策”ではある。
「チームが勝つために何をすべきかを考えた時、今の筒香の状態だと歩かされるケースが多くなる。たとえば、回の先頭が筒香だった時、四球になれば、下位打線に向かって行く。DeNAは得点圏に強く、チーム2位の打点を稼ぐ戸柱が6番を打っているが、打率自体は2割1分と振るわず、下位打線はそこまで強力とは言い難い。
データ重視のラミレス監督は常識に捉らわれることなく、筒香の打順を動かした。きちんと説明できるほどデータを徹底的に分析し、その姿勢が選手に信頼されているからこそ、実行できることです」(同前)
采配には多かれ少なかれ、ファンから疑問の声が生まれるもの。それでも、批判を恐れることなく、きちんとした根拠を明示した上で固定観念を打ち破っていくラミレス監督は、日本球界の新たな常識を作っていきそうだ。