ストーリーは、一見単純そうで単純ではない。第一話の冒頭、父親殺しのシーンをとくと見せられてしまうのが衝撃的。遺体を庭に埋める経緯まで、詳細が視聴者にわかってしまう。こうなると、「殺人事件の犯人探し」という凡庸なフレームから自由になる。物語はどこへ転がっていくかわからない。
さすが企画・原案が秋元康氏だけあって、構成的。見通せないまま次々に出来事が起こり、スピーディーに転がっていく、まさにローリングストーン。だから、のんびり録画してヒマな時に見ようなんて気分になれない。次はどうなるのか早く知りたくて、リアルタイム視聴を強いてくる。
ちなみに小出恵介さんが不祥事で降板、という予期しない不幸に見舞われたこのドラマ。がいやいやどうして。雨降って地固まる。代役として抜擢された賀来賢人さんが物語のカギを握りそうなジャーナリストとして、フィットしています。
●『居酒屋ふじ』(テレビ東京系土曜24時)
異色の深夜ドラマも、推薦したい! 東京・目黒に実在する居酒屋「ふじ」を舞台に、夜な夜な役者たちが集まってタムろしている。壁は有名人、芸能人のサイン色紙で埋め尽くされている。
常連客は大森南朋、大杉漣と、一クセも二クセもある連中。このドラマが奇妙なのは、実名で出てくる役者と、役名で出てくる役者が混在していること。だから、本当に役者たちが飲んでいるシーンとドラマ世界とが交錯し、混濁して虚々実々の魅力が漂うのです。
第3話では水川あさみさんが実名出演し、週刊誌記者に追われている「女優・水川」を熱演。
私の注目は主役、伸び悩む若手俳優・西尾栄一を演じる永山絢斗さん。都会の吹きだまりのような空間に、爽やかな一陣の風を吹かせてくれています。ご本人も「デビュー当時を思い出しました」と語っていますが、若さゆえにもがく姿がいい。永山さんの透明感が際立っていて、相手役の鯨井麻衣(飯豊まりえ)もぴったりの雰囲気。
今後はゲスト出演として前田敦子、おのののか、岸谷五朗といった面々が「実名」で登場してくるもよう。つまり、ドラマ『居酒屋ふじ』とは、役者そのものが素材となり、美味しい料理となる、ユニークな「飲食店」なのです。