芸能

高畑充希の過剰な「カホコ」を支える毒母・黒木瞳の存在

番組公式HPより

 見続けるか、やめてしまうか。いわゆる作品の「伸びしろ」の見極めどきである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 夏ドラマがそろそろ出揃い、各作品のテイスト感も判明してきました。今注目の3本は、これです!

●『過保護のカホコ』(日本テレビ・水曜午後10時)

 過保護に育てられた主人公・根本加穂子(高畑充希)は、21歳なのに、着ていく服さえ決めることができない「箱入り娘」「お姫さま」。そのカホコが、外の世界に目覚め、自分の意思を持ち、少しずつ踏み出し家の枠から出ていく……というそのプロセスが描かれていきます。

 正直言えばスタート当初、このドラマは苦手でした。高畑充希さんの、あまりのドジでウザい箱入り娘演技が過剰で、鼻について仕方なかったのです。もしそれだけを見せ続けられたら、途中でリタイアしていたかもしれません。何とか画学生・麦野初として登場する竹内涼真さんの清々しさにすがるようにして、視聴していたのでした。

 ところが……第3話あたりで、ドラマ世界にぐぐっと引き込まれてしまいました。「こうするべき」と母親が押しつける枠を、カホコが破壊し始めたあたりから。

「私がしゃべってるのを最後まで聞いてくれないのもやめてくれないかな」「何といっても麦野君と会うから」「うるさいうるさいうるさい」と、初めて母を怒鳴りつけたカホコ。

 役者・高畑さんのものすごいエネルギーが、ほとばしった瞬間でした。鳥肌が立ちました。

 その高畑さんの演技を絶賛する人は、多い。しかし、見所はそれだけではないはずです。土台で支えている存在がある。母親の泉役、黒木瞳さんです。

 娘を溺愛し、箱入りに収めておかなければ済まない母のエネルギー。ねちっこく娘の全てを把握し、決めていく強烈な力。そこへの反発として、カホコは爆発したのですから。つまり、支配する毒母の強烈な演技がなくては、このカホコの演技も成り立たない。高畑さんの爆発的演技を成り立たせているのは、黒木さん、とも言える。

 もし、このドラマに上手な相手役がいなかったら? 先に書いたように、高畑さんのやり過ぎ感ばかりが目立って、空回りしていたかもしれません。

 ということで、カホコドラマの真骨頂は、「役者同士の体当たり」と「配役バランスの妙」にある。脚本は『家政婦のミタ』等の大ヒット作を持つ遊川和彦氏。母-娘の関係に潜む依存問題など、社会への視野も持つ脚本家。周到に物語の構成を作り込んでくることは、間違いなさそう。これからも目が離せません。

●『愛していたって、秘密はある。』(日本テレビ系日曜午後10時半)

 主演は福士蒼汰。母親(鈴木保奈美)を守るため「父を殺した」秘密を持ちながら、普通の幸せを目の前に苦闘する青年・奥森黎を、独特の風合いで演じています。

 恋人(川口春奈)に自分の秘密を伝えることができない葛藤。そして、どこかに確かに潜んでいる「秘密を暴こうとする誰か」。次々に揺さぶりをかけてくるスリルとサスペンス。

 福士さんに対しては、あまり演技派という印象がなく、どちらかというと表情が乏しい役者さんだと感じていました。が、このドラマの主役は、実にいい味を出しています。むしろ、「表情がない」(しっかりと抑えている)ということが、アドバンテージとして生きている。秘密を抱えた青年の複雑さ、暗さ、屈折、内省といったものがぐっと滲み出してきて、引き込まれる要素になっています。

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン