両親が出稼ぎ者で、田舎の祖父母のもとなどで半放任状態に置かれる子どもは「留守児童」と呼ばれ、中国の大きな社会問題だ。
市場経済化の開始から25年を経た現在、初期の留守児童はすでに20~30代になっている。三和にいるのはそんな人々なのだ。
「オレは3歳から親の愛情を知らず、祖母一人に育てられた。両親は離婚して、現在はどちらとも没交渉。祖母には感謝しているが、学問を重視しない世代の人だったから、自分は高校に行けなかった」(湖南省出身の23歳、譚茂陽)
「両親と会うのは春節(旧正月)に年一度だった。勉強をしろと誰にも言われず、中学校を1年で中退してしまった」(老白)
現代の中国は階層の固定化が進んだ、強固な学歴社会だ。家族のつながりが薄く、高等教育も受けられなかった彼らの人生は、スタートの時点から挽回が難しい。譚茂陽はこう言う。
「親がおらず、子どもの頃から他人に見下されてきた。でも、ゲームの世界は違う。ちゃんと認められるんだ」
彼らから見たネトゲやスマホアプリの世界は、オフラインの現実の中国社会よりもずっと自由で平等で、希望にあふれた豊かな世界なのだ。