【2】複数に用意されている「場」
・みね子の田舎である奥茨城の農村
・向島電気の乙女寮と、その仲間たち
・すずふり亭と、アパートあかね荘の住人
脚本家・岡田惠和さんが考えた3つの「場」。みね子の成長物語を幹に据えたとして、それだけで半年間ひっぱるのは難しい。どうしても単調になり視聴者は退屈してしまいます。
そこで、木の幹から横に枝や葉が伸びるように、複数の場を用意して、その「場」を行ったり来たりしながら物語を進めていく手法が採られました。それが功を奏した。中だるみ感を払拭できた秘訣その2ではないでしょうか。
【3】昭和の時代と絶妙にクロス
少女の成長物語を軸にしつつ、昭和30~40年代の社会現象、高度経済成長による劇的な社会の変化、流行や風俗を関係づけて取り入れています。象徴的なシーンは、宗男(峯田和伸)が大興奮するビートルズ来日のくだり。他にも戦場からの帰還エピソード、グループサウンズなどのヒット曲、ミニスカートとツイッギー等々、時代の色があちこちに。
何よりも、みね子自身が「金の卵」。田舎からの集団就職という、経済成長時代をくっきりと反映している人物設定です。
奇しくも、前作『べっぴんさん』、前々作『とと姉ちゃん』共に昭和の同じ頃が舞台。しかしトッピングの如くに「昭和のエピソードをちょっと使ってみました」といった、薄っぺらさ感は否めなかった。しかし今回は違います。
出稼ぎに行かなければならなかった地方の状況→過酷な労働→父の記憶喪失→みね子上京→実家へ送金……といったように、時代と人物の遭遇する出来事とが途切れることなく連なっています。社会状況と切り離せない要素が人物造形の中に色濃く根ざしているために、物語に奥行き感や厚みが出てくるのでしょう。
半年という長丁場でもこのドラマが退屈しない理由の3つ目は、そのあたりにありそうです。