ビジネス

世界の悪役と化したディーゼルエンジン 実は改良余地大きい

高い燃費効率を誇るマツダ「デミオ」のディーゼル車

 クルマの電動化や環境規制強化の高まりにより、軽油燃料で走るディーゼル車を廃止しようという動きが広がっている。国内でもホンダやSUBARU(スバル)が主に欧州で販売しているディーゼル車の販売縮小や撤退方針を打ち出している。果たして、ディーゼル車の使命は完全に終わったのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

 * * *
 およそ2年前、フォルクスワーゲンの排出ガス不正が露見してからというもの、ディーゼルバッシングは止まる気配がない。そればかりか、憎悪の対象は内燃機関全般に飛び火し、フランスのニコラ・ユロ環境相が2040年に内燃機関を終了させるという、現時点では実現可能性を想定しがたい目標を打ち出したほどだ。

 ディーゼル問題にいちばんナーバスになっているのは、ディーゼル車販売の絶対数が少ないアメリカではなく、今や本拠地の欧州だ。ドイツでは8月、乗用車市場におけるディーゼル車の比率が4割を下回った。これについて日系自動車メーカーの欧州担当者は次のように事情を説明する。

「ドイツの一般ユーザーがディーゼルを嫌っているわけではない。ディーゼルが減った理由はいくつかあるが、一番影響が大きいのは、複数の大都市がディーゼル車進入禁止という規定を設けるのではないかということが懸念されていること。

 もしこれが実施されたらクルマの利便性が完全に損なわれるので、さすがにディーゼル車買い控えに直結する。また、企業が従業員に貸し出すカンパニーカーでディーゼルが減っているのもある程度影響しているかもしれない」

 大都市圏への進入禁止はディーゼル車ユーザーにとって死活問題だ。排ガスを理由とした進入制限は今までも実績がある。

 たとえばフランクフルトではずいぶん前に、ユーロ4という排ガス基準をクリアしていないクルマは進入禁止という規制が実施された。フランクフルト市街に入るには単にクルマがユーロ4を満たしているだけではダメで、ガソリンスタンドなどでユーロ4以上であることを示すステッカーを買ってウインドウに貼り付けないと罰金を取られる。

 ディーゼル車全体を進入禁止にするというのは社会に大きな影響を及ぼすが、そういう規則の運用に慣れた国だからこそ、実際にやりかねないという疑念をユーザーが抱くのは自然なことだ。

 自動車業界は“ディーゼルスキャンダル”を収束させようと、排ガスの浄化レベルを上げる対策を販売済みのクルマに施すということで手打ちを狙っているが、環境団体は浄化装置が低温環境では作動しないことが許されているなど問題は残ったままだと批判を続けており、先行きは不透明だ。

 が、ここで疑問が起こる。ディーゼルは本当に未来がないのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

会見で出場辞退を発表した広陵高校・堀正和校長
《海外でも”いじめスキャンダル”と波紋》広陵高校「説明会で質問なし」に見え隠れする「進路問題」 ”監督の思し召し”が進学先まで左右する強豪校の実態「有力大学の推薦枠は完全な椅子取りゲーム」 
NEWSポストセブン
起訴に関する言及を拒否した大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ハワイ高級リゾート開発を巡って訴えられる 通訳の次は代理人…サポートするはずの人物による“裏切りの連鎖” 
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
新体操フェアリージャパンのパワハラ問題 日本体操協会「第三者機関による評価報告」が“非公表”の不可解 スポーツ庁も「一般論として外部への公表をするよう示してきた」と指摘
NEWSポストセブン
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
大臣としての資質が問われる(写真/共同通信社)
三原じゅん子・こども政策担当相が暴力団とゴルフ写真の“反社疑惑”にダンマリの理由「官邸は三原氏のことなど構っていられない」
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン