「昭和」はとうに終わっているが、その時代に伸長した企業は、かろうじて生き残っていた。その一つが東芝だろう。しかし、カリスマ性を有した経営者といえども、一人の才覚で、30以上の事業を持つ総合電機メーカーの危機を乗り越えられるはずはなかった。それほど現代の経営環境は、複雑かつ、目まぐるしくうつろう。
西田はそれを分かった上で、自らの腕力で時代を乗り越えようとしたのだろう。それは失敗に終わったが、その責任を認めることだけは絶対に口にしようとしなかった。それは西田なりの矜恃なのだろう。
このインタビューを通し、経営者の孤独を見た気がする。それは、誰しもが抱える人間の弱さと言っていいかもしれない。
いまや聞かれなくなった「企業戦士」の模範のごとく、泥臭く、這い上がるように、その地位に上り詰めた男である。せめて、あの世では安らかに眠ってほしい。
ご冥福をお祈りします。
※本文敬称略
◆プロフィール:こだま・ひろし/1959年生まれ。早稲田大学卒業後、フリーランスとして取材、執筆活動を行う。月刊「文藝春秋」や「日経ビジネス」で企業のインサイドレポートを発表。主な著書に大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作を単行本化した『堤清二 罪と業 最後の「告白」』『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」』など。