「花壇の手入れや、下水の掃除も、清掃員ではなく、園長やアトラクションのスタッフが担当しているそうです。そうすることで、職員が『自分たちの遊園地だ』と、愛着がわいてきます。
自らが楽しい、好きだと思わなければ、お客さんもそう思ってくれないという考えからです」
今、「我が心の遊園地」に求められているのは、「等身大の自分を受け入れてくれる懐の深さ」なのかもしれない。
東京スカイツリー(R)や浅草寺の近くにある『浅草花やしき』は、150年以上の歴史を持つ日本最古の遊園地だが、広さは小学校の校庭ほど。一番人気のジェットコースターに乗ってみると、近隣の住宅のすぐ近くを通るため、民家に突っ込んでいきそうな錯覚が起こる。回転もスピードもないが、不安定なこの動きが、不思議と恐怖心をあおる。
しかし、来園者の60代女性は、この「変わらない姿」にホッとするそう。
「初めて来た高校生の頃からここは変わらなくて、私だけが年を取って不思議な気がします。でも、こうして乗り物に乗ったりベンチでソフトクリームを食べたりすると、昔に戻ったような安心感があります」
子供と夫と3人で訪れていた30代女性が言う。
「ディズニーやUSJはあのテンションや世界観にこちらが合わせて全力で遊ばなきゃ!と力んでしまう。写真も撮って、おみやげを買って…とつい慌てるけれど、花やしきは走って乗り物に並ばなくても全部きちんと回れるんです。
子供とゆっくり園内を歩いていると、ふとした瞬間に成長を感じることができる。うちの子、この前来た時は一緒に乗ってあげないとメリーゴーラウンドも怖がって乗らなかったのに、今日は自分から『ジェットコースターに乗ってくる!』とひとりで駆けだしていったんです。着々と自立心が芽生えてきているのかな?とか(笑い)。こんなふうに落ち着いて子供と向き合えるのは、楽しいけれど、ゆったりした時間が花やしきに流れているからかもしれないですね」
一日遊んで疲れた私を肩車してくれた父の背中から立ち上るたばこのにおいや、ジェットコースターのシートで『危ないからつかまっていなさい』と握ってくれた手の柔らかさ。
そんなかけがえのない人生の1ページを思い出させてくれながら、子供の成長や知らなかった一面を見せてくれるのが、「我が心の遊園地」なのかもしれない。
※女性セブン2018年1月1日号