「何度も試食を繰り返し、野菜が多めのあっさりとした味を再現しました。パッケージデザインは中華料理を連想させる赤を排除して、宇都宮餃子のイメージカラーとして茶色を採用しました」(鈴木さん)

 さらに『フレッシュネスバーガー』とのコラボも実現した。栃木県内限定で販売された「宇都宮野菜餃子バーガー」は試行錯誤の末、肉の代わりに“揚げ餃子”を使用するという画期的な商品となった。

「宇都宮という街に来たときには、どこを切っても同じ顔がでてくる金太郎飴のように、“宇都宮餃子”を感じてもらいたかったんです」(鈴木さん)

 今年8月には宇都宮を舞台とした足立梨花(25才)主演映画『キスできる餃子』も公開予定だ。横浜で行った宇都宮餃子のイベントで、地方創成の映画を得意とする秦建日子監督と鈴木さんが出会い、秦監督から『キスできる餃子とキスできない餃子』というラブロマンスの映画を撮りたいと提案され、映画化が決まったという。

 こうした活動と並行して、宇都宮餃子では“技術革命”が起こっていた。

「どの店でも一番人気のメニューである『焼き餃子』の味の決め手は焼き方。この良し悪しを決める専用の“焼き機”の研究に余念がありません。最高の焼き加減を実現するために、各店舗、業者と相談しながら鉄板の厚さやさまざまな器具を㎜単位で調整しています。宇都宮餃子界の“下町ロケット”だといわれています」(鈴木さん)

 しかも、その研究の成果は、頼まれれば、商売敵とも共有する。皆、自分の店の売り上げのことだけでなく、宇都宮餃子全体の底上げを望んでいるという。

 中には他県から訪れる同業者に自分の工場を見学させる店主もいるという。自らの技術と“宇都宮餃子ブランド”に自信があるからだろう。

 そのなかで、宇都宮市民の心情にも大きな変化が表れ始めた。

「最初は“餃子ばかりが宇都宮じゃないだろう”などと非難されることも多かった。だが、2013年頃から次第に“がんばろう”と声をかけてくれるようになった。当事者意識が宮っこの中に芽生えたのです」(鈴木さん)

 実際、取材中、記者が鈴木さんと一緒に街を歩いていると「がんばってるね」「いつも町のためにありがとう」と多くの人々からエールが飛んでいた。今回、首位奪還のニュースを聞いた人々からは、口々に「おめでとう」と声をかけられるという。鈴木さんがこう笑う。

「わが街の誇りをなかなか口に出せないシャイな市民性のみなさんが、私に“おめでとう”と言うことで、自分たちに“おめでとう”と言っているのでしょう。それは宇都宮餃子を自分たちの“郷土食”だと認め始めた証拠だと思います」(鈴木さん)

 こんな市民の気持ちの変化が、今回の日本一奪還へと繋がったのだろう。

※女性セブン2018年3月1日号

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