その結果、家族関係は崩壊して離婚が急増した。また現役世代が経済的余裕を失い、老いた親の面倒を見られなくなった。年金制度も未熟なため困窮した高齢者の自殺が相次いでいる。長幼の序はとうの昔に消え去ってしまった。最近では詐欺も横行し、治安も悪化している。
こうした絶望的な状況のなかで生まれたのが「ヘル朝鮮」という言葉だ。
文在寅は大統領選で「資本主義の副作用を取り払う」と訴えて、彼らの不満を巧みに取り込んだ。経済政策として「財閥改革」や「公務員を81万人増員」することを公約に掲げた。日本の国家公務員数は自衛隊員を含めても60万人余りだから、総人口が日本の半分の韓国で81万人という数字がいかに大きいかわかるだろう。財源は法人税の引き上げによって財閥などから確保する予定だ。
さらに非正規雇用をなくし最低賃金を時給7000ウォン(約700円)から1万ウォン(約1000円)に引き上げると公約している。しかし、最低賃金を引き上げれば中小企業は人を雇えなくなり、法人税を上げれば大企業は海外へ逃げていく。
そこで文在寅が目指しているのが、中国のような国家社会主義的な統制経済体制である。現在の韓国社会は、全体主義へと傾斜しつつある。実際、与党「共に民主党」からは、憲法にある「自由民主主義」から「自由」の文言を削除し、「所得の保証」や「解雇の禁止」など、反市場経済的な条項を設ける憲法改正案が提出されている。
韓国の若者たちには新自由主義経済への批判が強くあり、こうした文在寅政権の政策を強く支持している。