思想史研究家の片山杜秀氏


片山:つまりは、逆に浸透しているんじゃないかということですか。たしかに天皇が当たり前だという状態になって、賛成するにしても反対するにしても熱がない。譲位問題をどう議論するのかという前提をクリアするエネルギーすら国民にはない気がしました。

佐藤:タブー化されてはいないけど関心がないってことは、それだけ日本人の心の中に無意識のレベルで入り込んでいるのだと思います。といって宗教化しているというわけでもなく、習慣や文化のなかに深く入り込んでいる。 

 そういう意味では、昭和までは天皇が戦後のシンボルとして機能していた。しかし平成になり、その機能が弱まってしまったとは言えるかもしれません。

片山:その原因は昭和天皇と今上天皇を比較すると見えてきます。昭和天皇は、かつての現人神という強いカリスマ性を持っていました。しかし今上天皇にはそれがない。昭和8年生まれの今上天皇は、純粋に戦後民主主義のなかで育てられました。アメリカ人の児童文学者、ヴァイニング夫人(注2)が家庭教師になり、大正時代にヨーロッパに留学した親英国派で反マルクス主義の経済学者、小泉信三(注3)が教育の責任者をつとめた。戦後のリベラル的な理想像のハイブリッドの教育を受けた。また本人もその自覚を持っている。

【注2/ヴァイニング夫人、1902~1999。アメリカの児童文学作家。1946年にGHQに皇太子明仁親王の家庭教師に選ばれ来日する。4年間、皇太子らに英語教育などを行った。著書に皇太子との交流を描いた『皇太子の窓』がある。】

【注3/小泉信三、1888~1966。元慶應義塾大学塾長。イギリス古典派経済学研究とマルクス主義批判で知られる。戦後は皇太子明仁親王の教育と皇室の近代化につくした。】

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン