佐藤:今上天皇のそんな個性の影響で、いまは天皇制反対と反安倍政権の動きが結びつかない。議論が、天皇イコール日本帝国主義ではなくなったのです。これも平成に表出した現象と言えます。
片山:逆に今上天皇を立てて、平和、戦後民主主義、日本憲法を擁護していこうと考えているリベラル言論人も少なくないですからね。今上天皇の存在を反安倍政権につなげて論じる人も増えている。
その文脈でいえば、昭和天皇と今上天皇父子は人間天皇と象徴天皇を結びつけて戦後民主主義と相性のいい天皇のありようを模索してきた。親子二代にわたる戦略が一つの勝利を収めたといってもよいでしょう。
佐藤:面白い指摘ですね。
片山:私は今上天皇の「お言葉」は、父である昭和天皇が行った8月15日の玉音放送を意識しているように感じるのです。8月15日の終戦の詔から「人間宣言」を経て今回の「お言葉」へ。親子二代で「人間宣言」を完成させたともいえるのではないかと。
「人間宣言」は、神道を国家宗教から切り離したいというGHQの意向を受けて行われました。それまでは、神話によって神性を保証された天皇を、国民との相互的信頼関係を築いていくことで、素晴らしい人間として天皇の地位を国民に認めさせた。そして天皇制の存続をはかった。それが「人間宣言」です。