従来の刑事・医療ドラマのような型にはめるタイプの作品は、かつての『水戸黄門』や『遠山の金さん』などの時代劇を見れば分かるように、中高年向きのコンテンツ。シンプルな勧善懲悪の物語が多いことも、そのターゲット層を裏づけています。
しかし、現在放送されている刑事ドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)は、「型からあえて外れよう」とした意欲作。「一話の終盤に盛り上がりを作りつつ、謎を次回に持ち越し、それを次回の序盤で解決させ、オープニングをはさんで、新たなエピソードをはじめる」というパターンを見せるなど、新たな挑戦を見せています。
今後は、従来の型にはめるタイプと、『コンフィデンスマンJP』『ヘッドハンター』『シグナル』のような型にはまらないタイプを共存させることで、一話完結モノを楽しむ年齢層が広がるのではないでしょうか。
視聴率は従来の型にはめるタイプが強さを見せていますが、流れが変わりそうなムードが漂っているのは間違いありません。その意味で、今春がいい意味での分水嶺になる気がするのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。