何らかの議論をする時、相手を批判する場合は前置きをする話法があるが、それに似ている。「こんなことを言うと非常識かと思われるかもしれませんが……」「この問題に苦しんでいる人がいるのは理解してますが……」「とても失礼な言い方になるかもしれませんが……」などは日常的にもよく聞かれる。自分が非常識で冷徹で失礼な人間だと理解していると予め宣言しておくことにより、批判をすることが許されると考える「予防線話法」である。
「こんな中、不謹慎かもですけど」的な前置きも今回続出しているが、同様の予防線話法としてSNSでは定着したのかもしれない。
そんな状況下、芸能人のブログやSNSの世界においても“不謹慎厨対策”は定着した感がある。過去の芸能人炎上騒動の教訓から、各人がよく学んだ。現在のトレンドは「すぐに被災地への心配と配慮の言葉をつづる」「写真は掲載しない」「宣伝材料があるにしても『こんな時に恐縮ですが…』と書く」の3点。
後は誰かが能天気なことを解禁するのを息を潜めながら待ち、普段通りの更新に戻るタイミングを見計らうのだ。実にくだらん作法だ。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2018年7月6日号