──それはどういう場で言われるんですか?
永井:呼び出されたんですよ。そのときは「赤塚先生がなんかアドバイスしたいって言ってるから行かないか」と編集者に言われて。赤塚先生なんて雲の上の人だから、喜んで赤塚先生のプロダクションへ行ったらしばらく仕事場の端っこのほうで待たされて。で、「なんであんなもの描くんだよ!!」「あんなの描いちゃだめだ!!」って怒鳴りつけられて。だけど『少年マガジン』って当時、さいとう・たかを先生の『無用ノ介』で腕を切り落とすわ首を飛ばすわ血がばあっと飛び出すわみたいな、そういう漫画が同じ誌面に載ってるのに、僕の『じん太郎』は本当にかわいらしい、切られたときもキャラがにこにこ笑ってたりとかなので。
──よりブラックなんですけどね(笑)。
永井:ブラックな笑いだけれど、ちょっとかわいらしい感じで描いてるんで、これがだめで『無用ノ介』のリアルな太刀のシーンがOKだっていうその理屈わからないなあとか。帰ってきてから、「うーん、どうしようかな」と思ったんですけど、いや、これはもしかしたら赤塚先生は俺のこと怖がってるんだと思ったんですよ。
──デビューしたての若手だったけど。
永井:うん。それはデビュー3カ月目ですからね。いきなりそういう目に遭って、これはつまり、赤塚先生がだめって言ったことに将来活路があるんじゃないかと思ったんです。